大照湯
銭湯 - 北海道 札幌市
銭湯 - 北海道 札幌市
小雨の中、初めての大照湯へ。
この季節の雨は容赦無く体温を奪う。
冷えた身体を洗い、湯に晒し、いざサウナへ。
重厚なサウナ室のドアはまるでBarのようだ。期待が高まる。少々力を込め、ドアを開いた。
「好きだ」
思わず声が出た。生まれて初めての一目惚れである。
いわゆる電球色の照明がひとつ。好きな明るさだ。
ほのかな木の香り。好きな匂いだ。
流れる演歌。好き、ではないが嫌いでもない。
ひとりきりのサウナ室。2段のベンチ、当然のように上段に陣取った。しばし知らない演歌をやり過ごすと耳馴染みのある曲が。「襟裳岬」だ。
ひとりきりのサウナ室。唄わないわけにはいかない。イントロに身体を揺らしつつ歌い出しを待った。
「♪北のぉ〜」の「き」を発したその瞬間、サウナ室のドアが開いたので慌てて口を閉じた。でも多分、いや確実に聞かれていた。
(唄ってんじゃん!ちょっと物真似してたじゃん!)
そう思われたに違いないので、そそくさと水風呂ヘ向かった。
鈍感な私の皮膚センサーでも水の柔らかさがわかった。さっきまで雨を嫌っていたのに、いまは自ら水に飛び込んでニタニタしている。勝手なものだ。
小休止を挟んで再びサウナ室へ。
「浪花恋しぐれ」が流れていた。
「酒や!酒や!酒買こうてこい!」
春団治の魂が炸裂する。
私は噺家でもなければ泣かす女房もいないが、不思議と共感した。
帰り道、小雨は大雨になっていた。
酒買うてこい!という相手もいないので、自分でハイボールを買って帰りました。
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