銭湯サウナーが見た宇宙
サウナイキタイ アドベントカレンダー 14日目の記事です。
整ってますか~!?
どうもこんにちは。永遠のサウナビギナーを自称するぼくです。実際にもサウナ歴はわずか8ヶ月そこそこで、ゆーてもサ活も50数回の若輩者です。
そんなぼくが歴戦の猛者の皆様と肩を並べて、このサウナイキタイのアドベントカレンダーの記事を書いても良いのかどうか、今この瞬間にもそれを考えては筆が止まり、一旦サウナでリフレッシュしてからまた再開というのを繰り返しつつ、震えながらこれをしたためている次第です。
さて、思い出してみるとぼくが初めて「整った」のは、何を隠そう鶯谷の最強銭湯「ひだまりの泉 萩の湯」さんでございまして、それはサウナではありませんでした。
いわゆるあつ湯と水風呂で行う交互浴というやつなんですけど、あついお風呂で体を温めた後に水風呂に入って、休憩。これを繰り返すことによって心身ともに整って、あげく最後は「宇宙~~~~~!!!!」という状態になるという、例のアレです。
交互浴が好きすぎて交互浴図解を描きました。
コンディションによっては体調が悪くなることもあるので、体と相談しながら試してみてください!#交互浴 #交互浴図解 pic.twitter.com/GED4J0hXCr— enya honami (塩谷歩波) (@enyahonami) April 16, 2017
参考文献:塩谷歩波氏「交互浴図解」
それが自分に合っていたのかなんなのか、しばらくはそれを様々な銭湯で試してみては、それはもうことごとく整い、調子に乗ってその範囲(地域)をどんどん広げていったのであります。
当時のぼくは水風呂さえあれば整うと完全に思い込んでおり、銭湯を検索する時は水風呂の有り無ししか見ておらず、有れば行くし無ければ行かない、その程度の頭で行動していました。
そんな時です。
あれは立川の銭湯「立川湯屋敷 梅の湯」さんを訪れた時のことです。
こちらは、1万冊あるともいわれる漫画や、それと一緒に所狭しと飾られているワンピースのフィギュアに圧倒されたり、風呂上がりに生ビールやおつまみが楽しめるとか、サウナはもちろん岩盤浴まであったり、はたまた電子マネーに対応してたり等々、嬉しい要素が盛りだくさんな、都内でも屈指の人気銭湯です。
しかし、当時のぼくはサウナ無しの交互浴一本勝負で望んでいたためか、まさかの「半分整い(はんとと)」状態でフィニッシュという事態に陥ってしまいました。
たまたま鼻炎がひどい日だったので体調のせいもあったかもしれませんが、とにもかくにも初めて「はんとと」を経験してしまったのです。それは(ぼくにとって)歴史的アンビリーバブルな出来事であり、その後の(銭湯)人生に大きな影響を与えることとなりました。
せっかく来てるのに、「はんとと」なんてありえない。そう思いましたね。
しかし、答えはすでに出ていたのです。
ぼくは逃げていただけなんです、サウナから。
やるべきことなら分かっている。
・銭湯に行ってサウナに入る
・サウナ室でしっかりあったまった体で水風呂に入る
・カラン前で休憩する
最初からそうすれば良かったのですが、踏み切れなかった理由は、過去に数回試してイマイチ整わなかった経験があったからです。しかしながら、あつ湯のない銭湯が存在することも事実。
さらには銭湯巡りが趣味となってしまい、ひとっところには留まっていられない、さながら銭湯ジプシーと化したぼくにとって、サウナをマスターすることはもはや避けては通れぬ茨の道となっていました。それからというもの、銭湯の検索クエリには「水風呂」のみならず「サウナ」が加わることになりました。
そんなこんなで今やいっぱしのサウナー気取りのぼくですが、主戦場はサウナ施設やスーパー銭湯ではなく、やはり銭湯です。ここがぼくのアナザースカイ。
サウナのある銭湯を貪欲に狙ってゆく銭湯サウナハンター。それこそがようやく辿り着いた真の姿です。さて、そんなぼくから、ここで一つクエスチョンです!!
銭湯のお客さんの中には一定数、「浴槽の水(お湯)をバシャバシャ外に出す」人がいるのですが、それは一体何をしているのでしょうか?
ドゥルドゥルドゥルドゥル ドゥルドゥルドゥルドゥル ルーーー♪
はい。見たことありますか?
整いイスとかで休憩してる時って、ボーっとしてたりしますよね?もしくは次のセット前にお風呂で少し体を温めている時。そんな時によく見るんです、浴槽の水(お湯)をバシャバシャ外に出している人を。何度か見かけてましたが、最初はそこまで気にしていなかったんです。なにしろ銭湯には色んな人がいますから。
初めて気にしたのは、昭島市の銭湯「富士見湯」さんに行った時のこと。
こちらの銭湯は、浴場背景画がヤバいとか、約7000冊の漫画があるとか、漫画本棚のポップがヴィレヴァン並みにアツいとか、露天風呂で謎のスライド上映とか、もう要素が多過ぎて語り尽くせないわけですが、それは置いておいて、いつものようにサウナと水風呂のあとに露天の外気浴を楽しんだ後、2回戦へ向けてお風呂でまったり体をあたためていたところ、その光景が目に入ってきたのです。
バシャン…!バシャン…!バシャン…!バシャン…!
ん? ああ、またやってますなぁと。見ると水風呂の水をバシャバシャ外に出してるおっさんがいるわけです。何度か見た光景でもあるので、最初それほど気にかけませんでした。
ところが、です。
バシャン…!バシャン…!………………………………………………バシャン…!
いや、まだやってんのかい!と。とどまることを知らない水出し行為。その姿はまさに一心不乱という言葉にふさわしく、動きには一切の無駄がなく、その目は一点を見つめ続けています。
それはもはや、何かの祈りのようでもあり、また罰のようでもある。ぼくは目が離せなくなってしまいました。
バシャン…!バシャン…!バシャン…!バシャン…!
ええ加減にせいよ!と。おっさん、もうええやろ。ぼくは心の中でツッコミを入れ続けました。
……………バシャン!
さすがのぼくも見るのに飽きてきた頃、ようやくそれは止まりました。実に1分以上にわたる演舞だったと思われます。ぼくは、さぞやおっさんは恍惚の表情を浮かべているのだろうとその顔を見たのですが、あり得ないことに完っ全な無表情でございました。何が彼をそこまで突き動かしたのか。そもそもその行為自体に一体何の意味があるのか。ぼくの好奇心は、その後その一点に集中したのは言うまでもありません。
思えば同様の光景はそれまで幾度となく目にしていました。ただ気にしていなかっただけにすぎないんです。しかし、よく考えてみてください。あれにどんな意味があるのか、を。
とはいえ、それを行った人間に対して、「あのー、つかぬ事をお伺いしますが、さっきのアレは一体何をしていたのですか?」なんて質問ができるはずもありません。それはカランに私物を置いて場所取りをする行為くらいトラブルの原因にしかならない最も危険な行いといえます。事はドラマ「昼のセント酒」のようにうまくはいきません。本来銭湯の男湯というのは殺伐としたものであり、気軽に他人同士が交流する場ではないのです(偏見です)。ならばということで、いくつか仮説を立てて考えていくことにしました。
仮説1:浴槽のごみを外に出している
この説は間違いでしょう。なぜならそれは1~2回程度のバシャバシャで事足りるからです。
仮説2:水風呂の温度調節をしている
この説の信憑性は、まずサウナーは温度に拘るという前提があります。やれ20℃以上は熱くてのぼせるだの、冷たければ冷たいほどいいだの、理想の水風呂は15℃だの。かくいうぼくも理想の温度は16℃とプロフィールにも書いているくらいなので、気持ちは痛いほどよく分かります。
しかし、残念ながらこの説は間違いです。なぜならこの行為は水風呂だけでなく普通のお風呂でも平然と行われているからです。
仮説3:古くから伝わる地域等の風習でやっている(実は本人も意味は分かってない)
この説はある意味では正鵠を射ているのかもしれません。その理由としては、実に日本人らしい理由といえなくもないからです。実際に銭湯に限らずそういったことは日常生活に溢れていて、ふとした瞬間にそこに素朴な疑問を持った子供から質問された時、大人がとっさに正しい答えを出せないということはよくあることです。
しかしながらこの説も疑わざるを得ないと思った出来事が、麻布十番の銭湯「麻布黒美水温泉 竹の湯」さんで起こりました。
こちらは麻布十番という泣く子も黙るセレブリティな場所ながら、お湯はいずれも黒湯の天然温泉であり、なんと水風呂までが黒湯という拘りっぷりをみせている素晴らしい銭湯です。
いつものように、ぼくがのへへ~と整っている時、ふと隣を見ると、なんと外人のお兄さんがせっせとバシャバシャお湯(黒湯)出しをしているではありませんか!いや、もしかしたらハーフとかで外人顔なだけの人だったのかもしれませんが、そうだとしてもあの顔の若さから見ておそらく20代。そしてあの強い眼差しから察するに自分の意思でやっている行為に違いないと思ったこともあり、ゆえにこの説は脆くも崩れ去りました。
以上の説がことごとく否定され万策尽きた時、一つの有力な仮説が上がりました。
それが、
仮説4:床を綺麗にしている
です。なるほど、そうかもしれない。
潔癖症の人は、自分が今から歩む道をできる限り最高の状態まで綺麗にしたい、そこにあるもの(お湯 or 水)をフル活用して。元潔癖症のぼくは、そう考えるとしっくりきたのです。
もちろん心の奥底ではよく分かっています。それで完璧に綺麗になることはあり得ないし、それをしてる間に前を誰かが通り過ぎたら全て台無し。それでも、それでもほんの少しの間だけでも、この後浴槽を出て歩く動線上を可能な限り完璧な状態にしたいというその一心で、一心不乱に水(お湯)で足元を清めていると考えたら、納得しちゃいませんか?
ぼくはしました。というか、それ以外には考えられませんでした。その答えに辿り着くまでには実に半年の時間を費やしました。そこに一切に後悔はありません。全部自分が起こしたことです。
ただ一つ、その答えが出た時に、今までにない達成感と多幸感、そして宇宙の存在を感じたのは確かです。
ということで……整った~~!!!!