サウナ即身仏卍

2019.11.15

6回目の訪問

花の金曜日とは嫌な言葉だ。明日は仕事である。甚だ腹立たしいこの気分はサウナでしか癒せない。サウナとは週一のペースで付き合っているが、そんなことはどうでもいい。会いたいときには既にバイクが駐車場に乗り付けている。

回数券も残り5回ほどか。スーパー銭湯ひじりのねへやってきた。子供達が走りながら浴場へ向かう。まずは身を清めようと椅子に座ると、先ほどの子供達が反対側ではしゃぎはじめる。
本来なら親、若しくは周りの人間が諌めるところだが、私には関係ない。私の神経はサウナに向いており、たとえ冷水を掛けられても些事である。
タワーサウナに入るとしばらくしてオートロウリュが始まる。いいぞ。この頃どうにもストレスが溜まるものだから、これをまるごと熱風の後ろへ置き去りにしたい。

外気浴をしていると、秋の涼やかな舞いが軽やかなBGMとともに始まる。羽衣が肌を掠めるように撫で上げ、彼女の手首に付いたチャフチャスが規則的に響く。心地がよい......。
最後にやはりフィンランド式に入る。するといつもは人気のない室内に3人もいるではないか。中にはポーカーフェイスをタオルで表現する猛者もいる。いいだろう、では最後の一人になって静寂を満喫してやろう!
私は猛者に倣い、タオルを頭に掛け、指を組む。その姿は神に祈る修道女のようである。祈る相手はトントゥであるが。
20分が過ぎる頃、室内には私と猛者の二人だけ。すると若い男が入ってくるが「違うな」と言い残して去ってゆく。このサウナの良さは時が経つのを楽しめる、つまり老いすら楽しめる人間にしかわからない。タオルで隠した猛者の顔にはそう書いてあっただろう。
ついに猛者が席を立ち、静寂を楽しむことができたのは12分時計が3周した頃だった。長居し過ぎてしまった。
外気浴に移ると、彼女は休憩中だと言わんばかりにカウンターでグラスを傾けていた。
いつもより心臓の鼓動がはやいのは、きっと彼女の澄んだ瞳にときめいたからだ。

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