水口温泉つばきの湯
温浴施設 - 滋賀県 甲賀市
温浴施設 - 滋賀県 甲賀市
太陽が雲に隠れ、夏の熱をしばらく忘れつつ私はバイクに跨がる。
今日は仕事が休みなので、私にサウナの道を示した先輩の家を訪ねに高速を走る。
私は先輩宅の庭仕事に、先輩は私のバイクを整備にというわけだ。双方の仕事が終わる頃にはサウナの中というわけだ。
今日は特別な日になる。先輩に誘われるままサウナに入門し、サウナのルーティンを学び、合わせるようにしてきた。しかし先輩と私は同じ人間ではなく、サウナを行く道もまた違う。
今日は巣立ちの日であるのだ。
水口温泉つばきの湯にはオートロウリュウが備わっており、身体を洗い終えた私達がサウナに入る頃には7分後に起動するという。初めて体験するが、これはまるで若鳥を高く掲げる風のようではないかと、そう思っていた。
三段ある中、最上段に登り、その時を待つ。合図があった。サウナストーン周辺がライトによって照らされる。
そこから5秒後、気道と耳が燃えるような熱さに悲鳴を上げる。
それは嵐であった。
水風呂は16度ほどで、リクライニングチェアーが3基、普通の椅子も多くある。ととのいスポットには事欠かない、豪華な仕様である。
叩き落とされた無様な鳥は冷たい海を長く漂っていた。やがて砂浜に打ち上げられると、羽根が乾く感じがする。するとまた飛ぶ練習を始める。これが3回目となる。
4回目にまた嵐がやってきた。先輩と道が交差した時、迷わず最上段に登る。
鳥とは高みを目指すものである。
容赦のない猛烈な風の中を行く。やがて暗くなり、ロウリュウが止まる。熱い風がサウナの中で消えていくのを感じる。
外気浴をしているとき、子供がサウナと水風呂に入っては我慢できずにすぐ出てきてしまうところを眺めた。
その眼に映ったのは、かつての私だった。
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