カプセル&サウナ ロスコ
カプセルホテル - 東京都 北区
カプセルホテル - 東京都 北区
私たちは敗北した。
世界中に蔓延したウイルスをワクチンで抑え込むと、また新たなウイルスがばら撒かれ、人々は互いに疑い合い、権力に解決を委託するように自ら自由を手放した。民主主義は降参した。親しきものと握手すら出来なくなった私たちは、四六時中、超高速情報通信と人工衛星に監視され、仮面をつけた資本家達だけがPC画面を眺めながら笑っていた。
戦争が始まった。
ついに神々は怒り出し、
大地震と異常気象を巻き起こした。
手持ちのカードが無くなった独裁者達が全てを精算するように一斉にボタンを押した。
ミサイル。ミサイル。
ミサイルミサイルミサイルミサイル。
世界中が粉々に破壊され、
わたしは出掛けた。
大切な思い出を一つずつ思い出しながら、好きな歌を口ずさみ、今はもう電車が走っていない壊れた山手線の線路を東へ歩いた。
その建物は残っていた。
誰もいない受付に1800円とポイントカードを置き3Fへ上がった。
防護服とマスクとフェイスガードと防災頭巾を脱ぎ捨て浴室へ入ると、サウナ室のガラス扉の向こうに人影が見えた。ガラス越しに覗いてみると、マヌケなツラをしたカップルが汗だくで口淫していた。わたしはサウナ室に侵入し、人類の信頼と協力と親和を、いや、愛そのものを小馬鹿にするように交わるこの人間の屑たちを殺して、存在しないはずの049番ロッカーに死体を押し込んだ。
再び浴室に戻り、血と汚れと感傷を洗い流し、サウナ室へ入った。この期に及んでも自棄っぱちに熱を発し続けるセラストーム2に全身を焼かれ、谷田川の地下水を汲み上げた天然水の水風呂へ向かう。
わたしは「ありがとう」と呟いて、
その天然水に入水した。
ロスコに死す。
もうたくさんだ。
[SGE 41.3℃]
男
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