おふろの王様 花小金井店
温浴施設 - 東京都 小平市
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パンクの原点と云えば現状を打破し、自由を手に入れたい気持ちを歌にして騒ぐものだが、村八分的な流れもあり、パンク的な格好をしていないものを蔑む傾向があり自由を叫びながら自ら不自由に陥り彷徨う不思議に矛盾した世界だった。
あくまで自分がパンクしていた時代の話なので今は違うと思うが。
モヒカンは何ミリでないとパンクじゃないとか、鋲ブレスレットを着けていないヤツは軟弱だとか、今思うと何のルールなのか分かったものではないが、それを着けているだけで自分は無敵なのだと錯覚していた。
そんな若かりし頃のマストアイテムと云えばシド・ヴィシャスが首元に着けてた俗に言うシド・チェーンだ。
かくいう自分も右に倣えで着けていた。
こちらの90度のサ室でそんな若かりしパンク時代を思い出していた。
理由は簡単だ。
サ室の最上段、深く深呼吸をしている時にモヒカンの男性が入ってきて隣に座ったのだ。
彼の首元にはシド・チェーンが光っていた。
パンクはこうでなくてはいけないという思いに取り憑かれた者は周りは誰も見ていないのに、自分なりのパンクを心の奥底に潜め、無茶を押し通しそれを実行するものが多い。
そして面白いことにそんな状態の人間は何を言ったって聞かない節がある。
シド・チェーンを着けた彼を見ながら過去のパンクであった自分を思い出しセンチメンタルな気分になった。
彼はサウナ初心者であろう。
ただでさえ熱い場所に熱を持ちやすいアイテムを身につけて入ってくるのだから。
しかし形から入るヤツこそ、こういう所に拘るということも分かる。
他に何もないからこそ外見とプライドだけは大事にしてるのだ。
そんな彼もいずれ歳を重ねた時に若い日の自分を振り返り若気の至りに苦笑を零すことだろう。
『あっつ!』
小さく呟いた彼は熱を持ったチェーンから身を守るために首にタオルを細く捻り、巻き始めた。
彼はその時図らずもパンクから中尾彬に変化していた。
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