白山湯 高辻店
銭湯 - 京都府 京都市
銭湯 - 京都府 京都市
「兄ちゃん、それに水入れといてくれるか?」どきりとして顔を上げる。それは水風呂の中の先客が私を見て発した言葉だった。
京都にはサウナの聖地と呼ばれている場所が2つある。「サウナの梅湯」そして私が今回初探訪した「白山湯 高辻店」だ。残念ながら梅湯が定休日のため今回は一箇所のみの巡礼となった。四条駅から10分ほど歩くと辿り着くここは、サウナに特化した最新の施設ではない、古くから地元の方から愛される歴史ある銭湯、これが京都の聖地なのだ。しばし感動した後、入店。入浴料は脅威の490円!レンタルタオル代が150円だが、退店時にタオルを返せば100円返金される仕組みだ。脱衣所に入ると先客の喧騒に思わず尻込みした。地元の方々の交流の場でもあるのだろう。完全なるアウェイ感。だがこれで怯んでいてたまるかと気合いを入れ、浴場へ。内風呂は通常の湯と日替わりの薬草湯、露天風呂もあり、それほど混雑はしていなかった。身体を清め中へ。最大12名ほどは入れるだろうか。空いていた上段に座る。温度計を確認すると110度をマーク。だが湿度の関係だろうか、ヒリヒリするような熱さは全くなく、心地よい熱に包まれる感覚がある。これは良いサウナだ。皮膚の感覚で直感的に理解する。12分きっちり蒸された後、すぐ外にある水風呂へ。地下からの天然水を使った水風呂の水は、飲用も可能であり、あのしきじの水と肩を並べる水質の良さを持っている。それが聖地たる所以なのだ。逸る気持ちを抑えながら水風呂の桶を使い汗を流し、さあ水風呂に入るぞ思った矢先、冒頭の注意を受けたのだった。少し驚いたが、言われた通り水で満たし桶を置いておく。気を取り直して水風呂へ入ると、身体を包みこむ水がなんとも心地よい。決して温い訳ではない、だがずっと入っていられる。いやむしろ、水風呂から出たくないと思わせるような感覚に支配される。既にととのいつつある脳に喝を入れ、露天風呂で見かけた外気浴椅子へ。ぼんやりとしながら先ほどのことを考える。私が以前行った関西のサウナや、サウナ北欧では休憩椅子に水をかけた後、桶に水を満たして置いておくという文化があり、感動したものだった。それはひとえに次に桶を使う人が、わざわざ水を汲む必要を無くすという見知らぬ他人への配慮だ。なるほど、水風呂でも同じことなのだろう。私が受けた注意も、決して説教じみたものではなく、優しく温かみのあるものであった。客同士でお互いに気軽に声を掛け合えるのも、銭湯文化ならではなのかもしれない。まだまだ、学ぶことが山ほどあるな 自省しながら2セット目に向かう。当初感じていたアウェイ感は3セット目を迎えるころには、すっかり消え失せていたのだった。
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