神戸サウナ&スパ
カプセルホテル - 兵庫県 神戸市
カプセルホテル - 兵庫県 神戸市
「トントゥ」北欧フィンランドに古くから伝わる妖精だ。彼らは人間に対し非常に好意的で、家や建物に住みつき住人を災いから守り幸福をもたらすと言われている。サウナにはサウナ・トントゥが住みついているとされ、子供たちに妖精が住まう神聖な場所のため、清潔に保ち大切に扱う必要があると教えているのだという。そこにあるのは、人や物を大切にするという普遍的ないたわりの心だ。
ここ「神戸サウナ&スパ」内には、正面玄関や通路など所々にトントゥの置物があり訪れたサウナ客を出迎えてくれる。フロントは高級ホテルのような佇まいで、昔ながらのサウナ、銭湯のイメージの払拭に成功している。階段を上がると、目の前に広がるのはヨーロッパの公衆浴場を思わせる吹き抜けの大風呂だ。仕切りはなく、どこにいても心地よい風が吹き込んでくる。サウナは3種、メインサウナ、塩サウナ、そしてリニューアルしたフィンランド式サウナ。特筆すべきはメインサウナで30分に一度の頻度で行われるスタッフによるロウリュだ。間違いなく日本一のロウリュ回数である。アロマ水をふんだんに使い、個別に熱波を送ってくれる。私が入った時は広いサウナ室にほぼ満席状態で、後半はさすがのスタッフも辛そうな表情を見せる。さらに、挙手した客に対して追加の熱波を送ってくれるという。へとへとのスタッフの姿に罪悪感を覚えながらも、私は両手をピンと伸ばし、「熱波10回、お願いします・・!」高らかに所望した。抗えないサウナーの性がそこにはあった。
広く明るいメインサウナとは打って変わってフィンランドサウナはほとんど光がない室内に10名程度入れる広さだ。温度表示は90度前後だが体感温度はメインサウナより熱く感じる。暗闇と静けさの中、じっくりと自分と向き合う。禅や瞑想、礼拝所にも似たその非日常的な時間が、現代人の琴線に触れてやまないのだ。
水風呂は11.7度。かなりの低温だが他にも20度前後の水風呂も配置されており、冷たい水風呂が苦手な人への配慮が感じられる。木製の椅子に座り、優しく吹き込む風を感じながらの外気浴。ぼんやりとしていると、視界に置物めいたものが設置されていることに気づく。トントゥだ。よく見ると浴場の色々なところに彼らがいることが、分かる。見守ってくれているのだろうか、あるいは、戒めか。私たちがサウナを大切にしている限り、彼らはととのいをもたらしてくれるだろう。ふと見ると、キョロキョロと空いている椅子を探しているサウナーがいる。さっと椅子を水で流し、どうぞと譲る。時計を見ると、そろそろロウリュの時間だ。よし行くぞと、次のセットに向かう。おいおいまだやるのかと、トントゥ達も呆れているかもしれないな、ひとり苦笑し、神戸の夜は更けていった。
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