奥のサ(isanow)

2020.08.23

1回目の訪問

波打ち際の少女との、ととのい三部作
第三部 福島編

この施設の特筆すべき点は、不感湯の多さだ。
寝湯も、露天風呂も多くが不感湯となっている。
高濃度炭酸泉もあり、つぼ湯(熱湯)があったりと
サウナ以外でも見事な楽しさを提供してくれる。

塩サウナには、丁寧な塩サウナの入り方が書かれてあり
それを実践すると、たしかにドバドバと汗が吹き出てくる。

露天スペースには畳が2畳分、置いてあり、寝転びながら、ととのうことも可能だ。

サウナは2分30秒ごとにオートロウリュされる。
テレビもなければ、段差もない、コの字型の実に硬派なサウナだ。
間接照明が照らすサウナストーン、オートロウリュの音。流れる汗。

そして、お父さんに付き添って、サウナに入っている子どもたち。
暑そうに、けれど、楽しそうに行儀よく座っている。

サウナ室を出て、2種類ある水風呂でしっかりと体を冷ましたあとに
露天スペースの畳の上で寝転びながら、真夏の空を見上げると
本当に空はどこまでも青くて、しだいに空なのか海なのかわからなくなってきた。
福島の誇る名湖・猪苗代湖も、思えば、こんな青色だったかもしれない。

「パパ」と聞こえた気がした。
パパ? 僕に子どもはいない。誰が僕をそんなふうに呼んでいるんだ?
「パパ」ともう一度、聞こえる。
僕はいつの間にか猪苗代湖の湖畔に立っていた。
「パパもおいでよ」と湖ではしゃぐ少女が言った。
「すごく遠浅だけど」と僕は心配する。「あまり行きすぎてはだめだよ」
「2人とも気をつけてね」と別の女性の声が言った。
砂浜を振り返ると、風に乱れされた髪を耳にかきあげている女性がいた。
そうか、彼女は僕の妻なのだ。
妻はまだ、よちよち歩きの男の子と手をつなぎ、バーベキューセットの前に立っていた。
「早く!」と娘が僕に水をかけて笑う。
日差しに肌が焦がれていく音すら聞こえてきそうだった。

まねきの湯の空の下に帰ってきた僕は涙を流していた。
どうして僕は泣いているんだろう?
いつかくるかもしれない未来を見たからだろうか?
あるいは失われてしまった未来を見たからだろうか?
わからない。僕らはいつだってそうだ。
わかっていないのに何かを選ばなければいけないのだ。

僕の涙はいつのまにか、真夏の太陽がどこかにやってしまっていた。

0
34

このサ活が気に入ったらトントゥをおくってみよう

トントゥをおくる

トントゥとは?

ログインするといいねや
コメントすることができます

すでに会員の方はこちら

サウナグッズ

アプリでサウナ探しが
もっと便利に!

サウナマップ、営業中サウナの検索など、
アプリ限定の機能が盛りだくさん!