
『ハーバルサウナ 温室』制作の全記録
『ハーバルサウナ 温室』とは、サウナ大好き芸人・マグ万平さん主催のサウナイベント『万平蒸祭 in ホテルマウント富士 Vol.3』にて、イベントの2日間限定で公開されたシークレットサウナです。
イベント会場であるホテルマウント富士の、今は使われていないハーブ温室をサウナに仕立てて、イベントに来てくれたお客さんを驚かせたい!楽しませたい!そんなマグ万平さんのアツい想いを発端に、サウナイキタイ運営のかぼちゃをはじめとしたサウナ愛好家とホテルマウント富士さんでチームを結成し、2ヶ月弱という限られた時間と予算の中での悪戦苦闘を経て、無事お披露目ができました。
Sauna Camp Festival 2019でサウナ原始を作ったチームがサウナ作りに携わりました
2日間の限定公開のため限られた方しか体験できなかったサウナですが、記録する意味も込めて制作の裏側を書き残しておきたいと思います。興味のある方はお付き合いください!
22年10月某日、初回の視察で温室と初めてのご対面。
実際に見るまでは「やってみたいとは言ったものの、ほんとにできるかな…?」と不安しかなかったのですが、きれいなお庭の片隅に佇むその姿を一目見て、できるかなじゃない!サウナにしたい!!という強い想いのロウリュが力強く立ち登りました。
もとの温室内。手前にはたくましく育っているハーブたち、左奥にはもともと温室を温めていた灯油暖房機
使っていないと言いつつたくさんのハーブたちがたくましく育っており、扉を開けた瞬間にうっとりするようないい香り。
このハーブの香りと、温室らしくたっぷりの湿度を胸いっぱいに吸い込みながら、視界を埋め尽くす植物の緑と全面ガラスから降り注ぐ太陽光に包まれながら、ゆっくりゆったり入っていられて、綺麗なお庭とおいしい空気で外気浴とのループが止まらない…そんなサウナを作りたい!!イメージのロウリュが脳内に充満します。
ストーブひとーつ
サウナにしたいとなると、一番の問題は熱源をどうするか。
もともと温室を暖めるための灯油暖房機が付いていましたが、残念ながら壊れてしまっていたためやむなく撤去。代わりに関係施設さんの倉庫から使っていない電気ストーブが見つかった(!)との朗報を受け、大急ぎの電気工事でインストール。わりと大きめのストーブだったので、これだけでなんとかなっちゃうかも…?と淡い期待を抱いたものの、温室の広さと、ガラス張りの弱点である断熱性の弱さで、最大出力でもほんのりあったかい程度…でもそれくらいは想定内!
ストーブふたーつ
暖房機に使っていた煙突を活かして、テントサウナ用の薪ストーブを追加インストールしました。電気と薪のダブルストーブならどうだ!と意気込んで着火したものの、しっかり汗をかけるまでにはなかなか至らず…そろそろ冷や汗をかきはじめます。
電気ストーブの追加設置はコストがかかるし工事も間に合わない。煙突穴は一つしかないからこれ以上薪ストーブを増やすこともできないし…と途方に暮れそうになりますが、なんとしてもこの温室をサウナにしたい。
ストーブみっつ!!
かくなる上は…!と力技で薪ストーブを2台連結させ、電気ストーブと合わせるとトリプルストーブの力パワープレイ。さらに煙突もグンと伸ばして火力アップを狙います。これでようやく汗がかけてきた…!
※ストーブ周りの処理は専門家の知見のもと安全面に配慮しながら実施しましたが、あくまで二日間限定の急ごしらえなので、真似されないようお願いします。
でもまだ、温室との初対面で思い描いたあの体感には届かない。
何が欲しいか…香りと湿度だ!
ロウリュ用の精油とフローラルォーターを作るために購入した蒸留器が役に立った
ハーブ水でロウリュをしたいのはもちろんとして、温室に一歩入った瞬間から香りと湿度に包まれたく、私物の蒸留機をハーブ蒸し機に転用。さらに煙突に水タンクを取り付けて湿度アップも狙います。
それでも飽き足らない我々、『マグ万平ののちほどサウナで』でも特集されていたタイのスチームサウナに着想を得て、ホテルの倉庫にあったペール缶とガスコンロで簡易スチーム装置をDIY!
缶の中でお湯を沸かしてハーブを蒸し、もともとあった換気扇にパイプを繋いで、ハーバル蒸気を送り込むと…室温が高いため目に見えてモクモクするわけではないものの、確かに温室内に充満する香りと湿度!!これこれ!これだあああ!!
ハーブに蒸されたい一心で、気がつけば電気、薪、ガスの3大サウナ熱源を制覇してしまった我々。さらにガラス張りから燦々と降り注ぐ太陽熱を加えれば…4種の熱源を全身に感じるクワトロ熱源ミックスサウナ!!
温めることに夢中になっているうちに開催日は目前、急ピッチで内装に着手…!
廃材を利用して、大工さんが大急ぎで作ってくれた立派なベンチ。座面の高さ、広さ、木材の色味や風合いも最高…!これを2日間のためだけに…
阪神サウナでもサウナ室のドア取っ手に麻ひもが巻かれてますね
背中が触れる可能性のある鉄筋には麻紐をぐるぐる巻き、
溶岩トッピング
電気ストーブ上にはパイプを組んで富士の溶岩石を積み、蓄熱と富士山パワーをアドオン。
視界を植物の緑で埋め尽くしながら蒸されたい…それを実現するためなら、大量の草木を剪定してはひたすらワイヤーと網に吊り下げる重労働も厭いません。
手、腕、肩、首、背中、腰を生贄として、痛みと疲労で霞む視界に緑が満ちていきます。
ここまでくるのに3時間ほど
無限に続くと思われた装飾(草飾)作業の目処がついたのは、イベント前日の夜。なんとか間に合った…と胸を撫で下ろし、満身創痍で最後のテスト運転を始めたその時、思わぬ大問題が発生。
いい香りに包まれる予定が鼻の奥がツンとして絶望した瞬間
剪定や装飾段階では気にならなかったのに、室温が上がるにつれ、草飾たちが一斉に刺激臭という牙を剥き始めたのです。これが自然素材のままならなさ…!これではとてもハーブの香りを楽しむことはできず、翌日早朝からスタッフ総出で別の植物と入れ替え。この時の絶望感はすごかった…
気合で再草飾を終えてスタートした後も、突然の温度低下などにも見舞われ(その時のお客さん、すみません…)ひたすら温度計とにらめっこしながら原因究明や改善を繰り返し、初日の午後にはなんとか安定運用を実現。
ハーブはもとの温室に植わっていたミントとローズマリーに加え、レモングラス、ホワイトセージ、バジル、ヨモギ、桑の葉、グァバ、ハイビスカス、月桃…と総勢10種以上をフィーリング頼りでブレンド!入るタイミングによって香りが変わります。
サウナ室内でスチームとして浴びているハーブと同じブレンドを使って、フレッシュハーブティーを振る舞ったりもしました。
スタッフユニフォームは園芸屋さんをイメージしてセットアップ。
万平さんも遊びにきてくれました
「うわ~いいにおい!」「こんなの初めて!」「ずっと入ってたい!」皆さんの笑顔と歓声が本当に嬉しかったです。イベントでは魅力的なサウナがたくさんある中、謎の温室に飛び込んできてくださった方々、ありがとうございました。
あの日入ってくださった方が、どこかでハーブの香りをかいだ時に、ふと思い出して笑顔になる。そんな特別な体験を作れていたら嬉しいです。
お客さん、マグ万平さん、ホテルマウント富士さん、イベントに関わったみなさま、貴重な機会をいただきありがとうございました!
関連リンク
労働式石焼サウナ『原始』制作の全記録
万平蒸祭 in ホテルマント富士 Vol.3~
ホテルマウント富士 | サウナイキタイ