カルロスの思い出
サウナイキタイ アドベントカレンダー 21日目の記事です。
どこの施設なのかは明記しませんが、なかなかおもしろい体験をしたので、それを書きます。ある日、サウナに行きました。ホテルに併設されているサウナです。サウナイキタイでも、なかなか高評価の施設。
平日の夕方だったせいか、全体的に閑散としており、洗い場には外国人旅行者であろう方々がぽつぽつと。17時からロウリュのサービスがある、と書いてあったので、ゆっくりとお湯につかり、5分くらい前からサウナ室で待機しました。その時、サウナ室にいたのは、自分を含めて3人でした。
しかし、17時になってもスタッフさんはあらわれず、いっこうにはじまる気配がありません。どうしたんだろう、中止になっちゃったのかな?と思って待っていたら、予定時刻より5分くらい過ぎた頃に、熱波師が入ってきました。
あ!さっき洗い場で体洗ってた人じゃん!その熱波師は、日本人ではなく、南国っぽい雰囲気の、浅黒い肌をした、少し小太りの外国の方でした。ホテルのフロントも外国の方だったけれど、熱波師も外国の方っていうのはめずらしいな、と思いました。その人のことを、カルロス(仮名)と呼ぶことにしましょう。
「ソレデハ ハジメマス」
カルロスはシンプルに言いました。他の施設のように、最初にロウリュとはなんぞや、アウフグースとはなんぞや云々といった説明は特になく、ロウリュがはじまりました。
カルロスがサウナストーンに水をかけ、タオルをぶるんぶるんとふりまわし、我々を団扇であおぎはじめたその直後!!
「アッツイ!!アッツイ!!」
カルロスが急に顔をゆがめ、悶えはじめたのです。
驚く私たち。
これほどまでに顔をゆがめ、この世の苦しみ、悲しみを100%背負ったような泣き顔、織○信成や野○村元議員の泣き顔に匹敵するようなインパクトです。
「アッツ!!!アッ……ムリ!!!」
「ゴメンナサイ!!ムリヨォォォォォ!!!!」
カルロスは道具を抱え、逃げるようにサウナ室を飛び出していきました。
残された私たち、しばし茫然。
熱いといっても、確かに熱かったけれど、そんな我慢できないほどではなかった。
茫然とした後には「心配の気持ち」がやってきて、そのあとにすぐ「おかしみの気持ち」がやってきました。そしてサウナ室にいた3人、顔を見合わせて、みんなでゲラゲラ笑いました。不思議な連帯感が生まれた瞬間でした。
ゲラゲラ。
けしからん、とかそんな感情はいっさいありませんでした。もちろん、クレームなんていれません。むしろ、なんだったの今の、というか、こんなのはじめてだね、ゲラゲラ、というか。そりゃそうだよね、熱いよね。サウナだもん。熱さに負けた熱波師。うん、おもしろい。
そして、サウナから出たら、カルロスったら、なんてことない顔して、ふつうにシャワー浴びてた。
それから何度かその施設には足を運んでいますが、まだカルロスの姿を見かけることはありません。さみしいです。
今、外国人研修生の待遇について社会問題となっていますが、
「ホテルのシゴトとキイテタノニ、100度以上のサウナの中で、タオルふりまわせってイワレタヨ!熱風ダヨ!熱風を仰グンダヨ!マサニ熱ジゴクヨ!!ニホン、オカシイヨ!!」
なんて故郷で語ってないといいな、と思いました。
おしまい。