サカナとサウナ 昆布

2023.06.01

1回目の訪問

富山県は温浴施設に困らない。
他県から訪れたある旅人が言っていた。

確かにこんな小さな氷見でも、スーパー銭湯や山奥の秘湯、民宿の日帰り温泉など大小様々な施設を合わせると、10か所以上の選択肢がある。
しかもそれぞれの温泉の泉質は少しずつ異なり、それぞれに素晴らしい魅力がある。
僕自身、ある温浴施設内のサウナに入りに来たのに、温泉だけで満足してそのままその場所を後にする、なんて日もザラにある。

しかしこのあおまさは温泉はもちろん、今年新設されたサウナも甲乙つけがたいほど素晴らしく、かつ氷見の魅力を随所に感じられるーーー



ある初夏の昼頃、まさに民宿らしい格子戸の入口を開け施設内に入ると、受付を済まして脱衣所へ向かう。
もうすでに、特徴的な温泉の香りがほのかに鼻をついてくる。
水着に着替えて浴室へ入り軽くシャワーを浴びたら、温泉に後ろ髪をひかれながらも直結の屋外サウナへ。

サウナの目の前には富山湾の形にカーブした砂浜と、どこまでも広がる海。思わず見とれながらも、早速サウナ室内へ。

10名は余裕で入れそうな大型のキューブ型サウナ。サウナストーブは左右2台あるおかげか、室内は広いながらも温度は安定し、しっかりと体を温めてくれる。
このサウナの魅力は大きな窓から見える富山湾の景色。海と空の境界線でもある水平線もくっきりと見渡すことができる。
ロウリュをしながらゆっくりと景色を眺めていると、あっという間に体の芯から温まる。

さぁ体を冷やそうとした時に、ここでは3種類の体の冷やし方があることに気づく。
一つは地下水水風呂、一つは冷やし温泉、そして海だ。

腹を決め、サウナ室から出てサンダルをひっかけて無心に海へと走る。
波に体を打ち付けた後、プカプカと浮いて体を冷やしていると、見上げた今日の空の青さに思わず何度もため息をついていた。

外気浴スペースに移り、インフィニティチェアに体を預けて感覚を研ぎ澄ます。
時折吹く浜風と、青空を横切るウミネコ、穏やかに続く波の音。
更にもうひと息、ふた息と、ため息をつく。

何セットか繰り返した後、ようやくため息も尽きたところで浴室へ戻り、お待ちかねの温泉へ。
海岸の奥深くを掘ってようやく出てきたという、独特な色と香りの塩泉にすっぽりと体を浸していると、尽きたと思われたため息がまた漏れてくる。

「あぁ上がったらビールだ、ビールしかない。けど、」

これから車の運転を控えた僕はそう呟きながら、
今度は泊まりに来よう
と深く自らの心に誓った。

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