2021.11.20 登録
[ 東京都 ]
そしがや温泉21 様
今日から、あたらしい世界が始まりました!
20年間通った貴方の居ない世界です。
まさかこのようなことが起こるとは、数年前の私には考えられませんでした。
当たり前のようにそこに在り、慣れ親しんだあの空間をあの空間で在り続けられるようにしてくれた存在。
当たり前なんてものはない。
失って初めて気づく。
こんな、文字に起こすとどこかありきたりな言葉が、今私の心に覆い被さり、大きな喪失感を生み出しています。
一方で、どこか納得している自分もいるのです。
いつのまにか、プールの頭上から流れる滝シャワーが無くなり、
左奥に設置されていたジェットバスもなくなり、
シルキーバスはいつの間にか透明になりました。
脱衣所を出た先の休憩室にあるあの黒いソファー。革が随分と捲れ上がり、ボロボロになりましたね。
自分一人では出来ないことが少しずつ増えて、老いていく生き物のように、貴方の衰えを実感していく場面が増えた気がしていました。
それでも、私は、貴方にいつも同じ表情で迎え入れてもらいました。
私がクラスメイトと大喧嘩して顔を腫らして泣いてたときも、
部活の試合で負けたときも、
高校の練習がキツくてサボったときも、
新卒で入った会社を辞めて祖師谷に戻ってきたときも、
徹夜の仕事を終わらせた日の夜も、
爺ちゃんの葬式の帰りに立ち寄ったときも、
妻に初めて貴方を紹介したときも。
貴方に私は何度救われたことでしょう。
サウナが流行り出した数年前からお客さんが増え始め、
貴方はこれからますます発展し、
私が爺さんになるまで当たり前のようにそこに在るものだと、
つい勝手な想像をしていたのかもしれません。
ほんとうに、これまでお疲れ様でした。
ゆっくり休んでください。
貴方は人間ではないのだから、私が死んでもあちらの世界で再会なんてことはないでしょうし、きっとこれが今生の別れなのでしょう。
私が死ぬのは、今よりもう大分後のことになるだろうから、私はこれから、心の片隅で貴方との想い出を胸に、貴方の居ないあたらしい世界を生きていこうと思います。
69年間ほんとうにお疲れ様でした。
20年間通わせていただきありがとうございました。
さようなら。
ありがとう、私のホームサウナ。
男