近江湯
銭湯 - 滋賀県 大津市
銭湯 - 滋賀県 大津市
友人宅の庭の手入れを目的に湖西道路を錆びた軽トラが走る。今日は昼までの仕事の予定で朝の渋滞に苛立ちながらナビゲーションに耳を傾ける。高速道路も使っていないのに所要時間表示は56分。8時半に着くという。そんなに早く着けるものかねと悪態を吐くほどの距離であるが、その時刻通りに友人宅が見えてくる。所謂魔法は常に思いの外のものである。湖西道路に乾杯。
庭仕事を終える頃には針が真上を指しており、少々の買い物を済ませて近江湯へ向かう。
今日はこの後、私の持ち寄った獣肉で謝肉祭を催す段取りだ。
昔ながらの出で立ちで、番台に金を支払い『はいから』な硝子張りのロッカーに荷物を預ける。なるほどここは美術館。客の背中をキャンバスに昇り龍が描かれているのも納得である。
浴場手前右側にサウナはあり、すし詰めで5人入れるくらいだろうか。1段だけの、小さなサウナだ。隣に座る名画観賞といこう。当方近視と乱視であるが、これほど近ければさして問題はない。有線から東京ららばいなど流れてくる。どうにもセンスの良いチョイスだ。ふたつ隣の壮年男性と拍子が合っていることに我が身の老いを感じる。
浴場入り口すぐ左手に水風呂がある。近江湯へ来たサウナーのサ活を読んでいるとどうやら井戸水らしい。しかし当時の私は新たに搬入された名画に釘付けで、水質など慮外もいいところだった。
近江湯の向かいにいかにもな自販機。友とパインアメサイダーを購入し、友人宅へ戻る。
その喉越しは午前5時の湖西道路の風によく似ていた。
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