水口温泉つばきの湯
温浴施設 - 滋賀県 甲賀市
温浴施設 - 滋賀県 甲賀市
夕方を僅かに逸れた頃、バイクと私は高速を駆ける。明日から3日間、滋賀で仕事があるのでいっそ大学時の先輩の家に泊まってしまおうという計画である。ととのってしまおうという計画でもある。
今月2回目となる水口温泉つばきの湯は全国から湯を取り寄せたり、サウナではオートロウリュ、熱波師もいたりと飽きの来ない、いい温泉である。さあ今回はどう来てくれるのだろうか。
サウナに入ると人は疎らで、子供が大人に様々な分野で挑戦するという番組が流れていた。このサウナでは毎時オートロウリュがあるのを知っているため、先輩の時計でタイミングを見計らう。まだ時間があるので2セット目に入る。
話は逸れるが、私こと山吹は造園士である。常に自然と隣り合わせの職業であり、雨になると仕事はできない。仕事中に降られることもある。故に天気予報が外れては予報士に悪態をつく始末である。
想定外の嵐が来た。ばかな。オートロウリュはあと30分は先のはず......しかし動き出す装置。不意討ちを受けた私はまさに仕事中だった。
ゲリラロウリュである。
なぜこんなに早く来たのだろうか。疑念がととのいの邪魔をする。そして先輩と共に3セット目へ突入すると、
なんと来たのは雪を纏った雲だった。
サウナーに配られる氷だらけのおしぼりは過酷に熱された身体へのオアシスだろうか。そして最上段の私のもとへ。
「すみません、おしぼりなくなっちゃいました。氷で良ければ......」
ここで私は、たとえサウナ内であろうと自然から逃れられぬ宿命であることを知る。
そうか、なるほど。では霧の中を行こう。
ミストサウナ内を軽快に進む。かつてバイクと共に霧降高原を駆けたように。
『21時から熱波士によるロウリュがありますのでーー』
予定より30分は過ぎているが行くより他に選択肢など!
サウナの前で気合いを入れる雄壮な熱波士。大団扇より送られる風は息をすることを許さない。だが私達は最上段に登る!
熱さは痛みに変わるがそれもまた自然である。いやーー私こそ自然なのかもしれない。
どうやら先輩の時計に30分の大幅なずれがあったようだが、自然とは常にわからないものだ。
今までの中で最高のととのいが9月30日、風の中に消える。
秋が来る。
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