カプセルホテルサウナ太陽
カプセルホテル - 東京都 板橋区
カプセルホテル - 東京都 板橋区
酸性雨が降りしきる小熟女の街、オーヤマ・シティ。
路地裏を覗けば、文字の一部が欠けた極彩色の蛍光管に、意識を失ったジャンキーが仄暗く照らされている。殺虫剤を使った激安のドラッグは、辛い現実を忘れさせてくれる代わりに、手足と内臓を確実に蝕む。ジャンキー共は、換えとなるサイバーパーツを入手することもできず、そのまま回収屋に拾われ、使える生体パーツとして泥棒市に並ぶのだ。
そんな彼らを横目に、立ち食いそば屋『そばひろ』に入る。
「紅生姜天で」「お兄ちゃん、春菊天じゃないのォ?」「紅生姜天だ」
手早くそばを腹に流し込むと、俺は街の片隅にある古ぼけた店構えのダイバー屋に入る。
「いらっしゃい…おお、あんたか。今日は準新作の『友達の親父』かい?」
「ゴクリ…いやそれはよしとこう…『太陽』で」
「『太陽』だぁ?そんなんあったか…ああ、これか。じゃあ、準備するからそのケーブルをジャックインしてくれ」
俺は、前世紀にこの地に存在したという、古のサウナの疑似体験(ヴァーチャルダイヴ)を注文した。
親父に渡されたケーブルを首につなげ、電脳世界(サイバースペース)にある合法サウナでトリップする為だ。
ボディーパーツが70%サイバー化された俺は、ナチュラルのサウナには入れない。
最も、TTNEの連中がナチュラルサウナを独占して政府の犬と小金を溜め込んだ悪党どもにだけ提供している現状では、疑似体験でしかサウナを味わえないから、どちらにせよ仕方がないが。
軽い貧血に似た感覚を覚えると、俺は困惑した。
煌びやかな明滅する照明。
何だココは。明らかにサウナ太陽とは異なる情景に唖然とする。
ステージの前で足に車輪を付けた半裸の男たちが、歌いながらギグをかましている。
客は古びた格好をした女どもだ。
『幾千分もの奇跡をこえて 巡りあった夢
君にしか 話したくない これからそこまで
泳いで瞳をさらいにゆくのさ
その髪にその指に 太陽がいっぱい』
ファック!
親父め、チャンネルをミスりやがった!
昔のアイドルのギグプログラム「太陽がいっぱい」じゃねえか!
俺は結局、ノーサウナで他人の太陽をいっぱい浴びるだけという、望まないダイブを終了(フィニッシュ)させた。
オーヤマ・シティのコーヒーは苦い。
(Copyright © ゴロリ All Rights Reserved.)
光GENJIは「銀河」も「太陽」も歌ってるとは!奴らは一体…
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら