東上野 寿湯
銭湯 - 東京都 台東区
銭湯 - 東京都 台東区
『紫蒸式部日記』
曙と鳥のさへずりと共に床を上げ、世の主婦が行ふ家事を全てこなした後に牛車に乗りて上野へ赴く
常々人で賑はふ上野なる場所には古より続きたる
『寿湯』といふ名湯あり
変わり湯、熱蒸風呂、露天風呂からなる素晴らしき場所と聞きて牛車を降り、徒歩にて稲荷町に向け歩きし折りに北欧なる館を目にしゆる
殿方のみが立ち入りを許されし場を恨めしく眺めつつ、歩み進めいざ寿湯に入れば入口にて慣れぬ場所故にまごつくもののやんわりと教え導かれたり
女湯に入りたればいずこも清々しく清められ、浴槽には紫の『紫根の湯』が沸き、その香りいずこかなつかしき思ひぞする
更に懐かしきは天井の模様と設へ
常に通いし十條湯の天井と色はやや違えど刻まれた文様も似たりその様、香りと共に故郷へ思い馳せゆる
直噴せしシャワーにて洗体を済ませ、紫根の湯に身を浸した後に熱蒸風呂へ向かふ
100度を記す温度計、常より温い熱蒸風呂に慣れし体には強く感じたるものの芳しき香り立ち昇りテレビの宮根なる男子の声と共に暫し蒸される
蒸された後に浸かる20度の水風呂は泡を常に盛り上げており、その冷たさより長く浸かる事は難しくすぐに上がりて、露天風呂の前へ設えられし介護入浴用椅子に身を沈めゆく
露天風呂は白く薄く濁りて、昨日行われたといふ酒粕の湯の名残を感ずる
屋根の合間より見る空は曇りて、細き雨を眺めつつ冬ではあるものの、暖気がやや漂う中じつと目を閉じ体を冷やして後、強き泡の噴き出る風呂にて身を解されり
同じ所作、三度四度繰り返し極楽浄土へ運ばれた後脱衣場にて装束を整える中、童の声が聞こへ来る
蹴鞠を終え、受付の側にある長椅子で電子遊戯をしつる男童達
かように此の町に溶け込みし銭湯は素晴らしき場所
盛大に降り出す夕暮れの雨中に寿湯を後にし、付き合いの長き友達5名と久し振りに湯島にて盃を交わす
疫病が落ち着いたればこそ出来る交わりを楽しみ、夜も更けて今日は幸せな日であつたと思ふ
嗚呼またしてもすごい傑作が生まれてる!なんとも美しき…。オマージュの女王と呼ばせていただきたい今宵。そう、こちら一度でいいから男湯堪能してみたい。男女入れ替え日設けられたし〜!
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