miyahara_ya

作る側が自由なら、使う側も自由でよい
河井寛次郎

ものづくりに従事する者にとって、悟りの境地とも言えるこの金言は、浴場においてはそうはいかない。客も様々だからだ。

脱衣場のロッカーの天端にはいつも埃ひとつない。シャワーの向きがいつも整えられているし、サウナ室のマットは純白で毛足が長く、実に清潔に保たれている。

丁寧な座禅ロウリュも、ほうじ茶を使用し全身に染み渡る素晴らしい体験だ。

人混みがないのはありがたいのだが、どうかこの熊本北部の名店の努力をみんなに感じてほしい。

キンキンに冷えた10度の水風呂に浸かりながら、筆者はそんなふうに、感慨にふけった。

ありがとうございます。

キンキンの水風呂にシンプルなサウナ室。

外気浴から見える景色には、朱色が美しい武雄温泉資料館と美しい桜山。

楼門のある景色は、私の原風景でさえある。

ありがとうございます。

なぜだか今日はとんでもない熱圧だった。

18℃の温泉水水風呂が、心地よく冷やしてくれた。素朴でコンパクトながら、申し分のないセッティング。

ありがとうございます。

パーフェクトな施設。

ありがとうございます。

裸婦像を始めて作った人間がどのような心持ちだったのだろうか。羞恥に苛まれながら、だとて芸術表現を極める。磨いた彫刻の技術を、どう表現するのか。その果てに、裸婦にたどり着いたのだろう。太古の芸術家の美意識に想いを馳せながら、浴室に雑然とならべられた沢山の裸婦像を眺めた。

　丘の上に建つこのホテルは、自然の美しい音色の中で外気浴を楽しめる。

　水風呂は、少しぬるめではあったが特徴的であった。水中の吐水口から放たれた地下水が、対面の壁にぶつかりゆるやかなバイブラを発生させていたのだ。静かな水面、だが水中はグワングワンと重く水がうごきつづける。深さや温度だけではない、おそらく意図しなかったものであろうが、筆者はいたく感動したのである。

　裸婦像たちに見守れながら、今日もゆっくりとととのった。