玉の湯
銭湯 - 東京都 杉並区
銭湯 - 東京都 杉並区
風の強さがちょっと心を揺さぶりすぎて、今夜は近場で済ませた
休みの日こそ近所でゆっくりするのが一番だと出不精の言い訳を呟きながら冷たい風に吹かれ向かう
浴室に入ると窓が開け放たれたように冷えた外気が吹き込んできて寒く感じた
窓はいつもと同じくほとんど開けられておらず、最近、春の気配を感じていたが、まだまだ寒い冬だと思った
それに対応するかのように今日はぬる湯の温度が高く感じた
不思議に思い、あつ湯の方に手を入れてみるとこちらはいつも通りの温度帯だったから、やはり明らかにぬる湯のいつもとは違った
「熱めのぬる湯」とは新境地のように思えたが、「チーズバーガー(チーズ抜き)」や「半ライス大盛り」のように自らレーゾンデートルを破壊するような自己否定の極みだと思い改めた
サウナ室に入るとヒノキやヒバ、森林浴を煮詰めたような苦い匂いがした
焼けて乾いたこのサウナに似合ういい匂いだと思った
上段は熱の放射が乾いた肌を心地よく刺激する
水風呂と外気で冷えた体を温め直すように熱が入ってくる
サウナを出ると人が増えていた
最初は土曜の夜に似つかわしくない閑散さがあり、それを一人噛み締め楽しんでいた
人が少ないと水の音だけが響く水色の景色に心が落ち着いた
人が増えてお喋りが響きだすと途端に雰囲気が変わる
あの高天井は多幸感も不快感も増幅させてしまうものだと思う
心穏やかに眺めるとどこまでも続いていくように広く感じるが、騒がしくなるとそこから地に落とされ、不快感が湧き上がってくる
余裕があった水風呂周りも急に狭く感じる
上段、下段ともに座ってみたら下段の方が今日は肌にあっていたようで汗が大量に流れた
途中、サウナがいっぱいになり、空き次第、席を変わる椅子取りゲームのようなことが繰り広げられていた
私はそれには参加せず、下段をキープした
最後は熱めのぬる湯に浸かる
混んでくるとそこかしこに使ったままのオケやイスが放置されている
狭く感じる原因はそれだと腹を立てながら片付けていると、一人のジイさんが自分の使った洗い場の鏡から蛇口からをタオルで拭いていた
それはものを労るような優しい手つきで、愛情のようなものを感じ、一人勝手に感動していた
目の曇りが取れるような出来事だった
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら