煮ゑ湯

2022.11.09

30回目の訪問

水曜サ活

玉の湯に行く日は大体、自分の中でやりきれない気持ちが燻っていて、このまま寝るのもなんだかな、って日が多い
今日もそうだった

久しぶりに来たのだからもう少しマシな理由をこさえておきたいところだが、ほとんどが夜遅くのことなので、わざわざ遠くに行くまでもなく、一番近いからと言って毎回玉の湯が選ばれるのは至極当然のことだ

そしてどうしてもっと早く来なかったのか、という気持ちになるのもやはり毎回であり、これもまた当然のことだ

綺麗に清掃され明るく広々とした浴室、あつ湯とぬる湯が揃う浴槽、十分に熱さを感じられるサ室、水量溢れる広めの水風呂

━━これだけ揃っているのに何が満たされないのか
満たされていない自分だけが場違いで滑稽に思えてくる
燻っていた気持ちもどうでもよくなってくる

今日は特にあつ湯がそれほど熱くなかったのだが、バイブラの肌触り、温度感、匂い、どれをとっても素晴らしく400年に1回あるかないかの出来事だった

星と星の引力が織りなす大スペクタクルな天体ショーに思いを馳せながら、人と人との間に作用する力学に翻弄され日々を過ごす自分の日常のサイズにまで視点を落としてみる

月と地球は常に同じ面を向けあって回っている訳だけど

「コイツの顔、見飽きたな」

とか思ったりしないのだろうか


たまには喧嘩してそっぽを向いたりしないのだろうか


いよいよ仲がこじれて逆回転を始めたりしないのだろうか

仲直りをして妙に距離が近くなったりしないだろうか


月が浮気して火星の周りを回り始めないだろうか

ついでに水星と金星の間で二股をかける展開はどうだろうか

オシャレな土星に惹かれたり、木星のスケールの大きさになびいたりしたこともあったのだろうか

海王星は浮気がバレるとさらに顔が真っ青になるのか否か

「誰にも認められない冥王星だけど、私にだけはあなたの良さがわかる」とか秘めたる思いを抱く思春期を経て大人になったのだろうか聞いてみたい


……宇宙規模でみみっちいことを考え座るサ室、ストーブの音に耳を傾け、たっぷりの熱に包まれる

ドアの窓から浴室を眺めると奥にペンキ絵が見える

サ室から覗く富士はいつも以上に大きく青い

「地球は青かった」と言ったガガーリンの心境に一歩近づいた気がする

これは小さな一歩だが人類にとっては大きな一歩

…のはずがなく、よくある日常の一コマに過ぎない

私の悩みなんて日常の人間関係の引力圏に収まる小さいものだが、そんなことを毎回きっちり水に流してくれる玉の湯が徒歩圏内にあるのは大きい

煮ゑ湯さんの玉の湯のサ活写真
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