フィンランド・ヴィレッジ
温浴施設 - 長野県 南佐久郡小海町
温浴施設 - 長野県 南佐久郡小海町
【サウナフェス体験記:文豪の一句が蘇る】
「フェス……?まぁ行ったことはあるよ。」
真っ赤なウソである。
この四半世紀、フェスという行事に縁のない暗い人生だった。
いつもそうだった。
「初体験……?まぁ20歳の夏かな。」
これも巧妙なウソだ。
……チェリーだったちょうど今から5年前。東南アジア諸国旅先にて、誤って「スケベマッサージ店」に入店。「special」たるものに初体験を終えた。
「こういう店あまり来ないのでうまくできなry……」
保険をかけるウソだ。
帰国してからもフェスどころか異性にも縁がない人生。
3年前に旅先で連れてもらった中洲にて日本での初体験を終えた。
小生の所有する経験は他人に比べて圧倒的に少ない。
しかし少ない代わりに、ひとつの経験が濃厚過ぎるのである。
そう、今回のサウナフェスを含めて。
「だから彼女が生きている限り、あなた限りに打ち明けられた秘密として全てを閉まっておいてください。」
(夏目漱石著「こころ」より一部抜粋)
………………………………
既にたくさんの参加者さんが詳しく投稿しているので、そちらを参考にいただければ。
小生が語りたいのは唯一、湖でのあの景色だけ。
TYLOでセルフロウリュ4連発。初雪のようにゆっくりと熱が降りそそぐ……
高熱と化して「hot gravity」が小生を包み込む。
そこから湖へ。岸に撮影者がいて、どうしてもそちらも向いてしまう。ただラストセットだった。
夕暮れのフィンランドビレッジ。
初めて岸に背を向け、景色を目の当たりにした。
そこに広がる自然の景色。
波打たず、真っ直ぐとつながる水面に浮かび上がるのはたったひとつのアタマだけ。
自然と一体化した瞬間だった。
雑音が抜け、静寂の瞬間だった。
我を見失った瞬間だった。
左右の草が風でせせらぐ。
低水温を求め、少し移動した時、ふと我に戻る。
「あぁ、あの刹那、忘れない。」
学生時代習っていた茶道の師にこう言われたのを思い出す。
「一期一会の精神にて茶碗に刮目せよ」
一期一会の精神、つまりカメラで写真を撮らずに、己の目で見た景色を脳に焼き付け印象づける。
これからの人生において反芻する景色になるだろう
「フェス?行ったことあるよ、サウナフェスにね。」
もう堂々と言える。人生四半世紀を過ぎた今日、まだまだこれからではないか。[完]
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら