カプセル&サウナ ロスコ
カプセルホテル - 東京都 北区
カプセルホテル - 東京都 北区
水風呂のなかで膝を抱え、顎の先まできっちり埋まる。ライオンの口からだばだばと猛烈な勢いで放出される、まろやかな地下水に裸を呑まれながらこう思った。
「サウナには陰陽がある」と。
「そしてロスコの陰を誇りに思う」と。
浴室内にあえてむき出しのまま張り巡らされたパイプやダクトは、経年の味をまとって無骨な構造美を見せる。
タイルの壁床はほの暗さを保ったまま、常に新鮮な冷水を波打たせる。
窓の外のちろちろとした日差しが水面をなでるように落ちていて、当たり前のようにやる気なくもきらめいている。
ドライサウナは乳白色の、毛足ふわりとしたマットを敷き詰めていて、まるで猫バスのお腹の中のような居心地をくれる。
サウナ室全体をしじゅう揺るがす、ごぉん、ぼぉん、という機械音は、心を沈静化させる「1/fのゆらぎ」に満ちている。
ロスコは陽キャを目指さない。
陰キャの美学をつらぬいている。
影があるから光は輝き、日常があるからハレは愉快で、水風呂があるからサウナはいつも、美しい。
そんなことを考えていたら、鼻から漏れる息がミントを含んだようにキレキレになっていた。まちがいなく今のわたしは内臓がクールだ。
耳元でもうぼっこぼこにバイブラが責め立てる。
どうやら膝を抱えたまま、ずいぶん長いこと水風呂に浸かっていたらしい。
よっこい庄一と自分にむけて声をかけ、だばだばと豪快に溢れまくる18℃の汲み上げ水から身体をおこした。目の前にポツンと置かれたととのい椅子にお尻を押し込む。
ざあっと網目のあまみが広がる。ここのサウナはガキンと熱い。血流のほどける落差感を、存分たのしめる楽園なのが間違いない。
ふは、とからっぽの浴室の中に声が漏れてしまった。
誰もいない部屋で声を漏らすだなんて、わたしも陰キャだ。
もうぞんぶんに身体は冷えた。
さあ、あつあつの猫バスのお腹に戻らなくてはね。
立ち上がったつま先のムーブにぱしゃりと爆ぜた冷水が、光をまとって渦巻ながら、つやめく溝にひゅるりと消えた、ような気がした。
女
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