古戦場
温浴施設 - 岩手県 一関市
温浴施設 - 岩手県 一関市
岩手の名サウナ、古戦場。
「サウナイキタイ」岩手県内第一位という触れ込みは伊達ではなく、全国の愛好家たちが幾度となく足を運ぶという。念願叶い、いよいよの初訪問である。
外観も然ることながら、内装の趣向にまず心を奪われる。どこか懐かしさと清潔さを同時に纏い、随所に温かい工夫が施されている。グッズ売り場も充実し、思わずmokuタオルを三枚、トートバッグを一つ購入。スパバッグは再販待ちとのこと。こればかりは致し方ない。
浴場に足を踏み入れると、クラウドファンディングへの感謝の言葉があちこちに掲げられている。その一枚一枚に、四代目当主の熱き想いが滲み、まだ湯にも入らぬうちに胸が温まる。
さて、サウナは二つ。薬草サウナと溶岩サウナである。
まずは薬草サウナへ。
定員十名ほど、室温九十六度、湿度も高く、まさに理想の環境。最上段、ストーブの前に座ると、漢方の芳香が鼻腔を満たす。三分で汗がじわり、ロウリュの応答も見事で、前列では肌に火花が散るような熱を感じる。まさに、今、強い刺激を欲していた我が身にぴたりと寄り添う。セルフアウフグースを頂戴し、滝汗が止まらぬ十余分。心拍は一七〇を超える。
そして水風呂へ。井戸水の掛け流し、十六度。
ひんやりとした滑らかな肌触りが、熱で火照った身体をすっと包む。冷たさではない、優しさを感じる水である。
そして何より、驚くべきは外気浴。
七脚のデッキチェアの正面には、まさに満開の桜。
その下でインフィニティチェアに身を預け、春風に吹かれながらただ静かにととのう。あまみが浮かび、時間が溶ける。これほどの幸せが他にあるだろうか。
二巡目は、鳥海山の溶岩サウナへ。
室温百度。五分後、セルフロウリュで白樺の香を愉しむ。それでも、なぜか薬草サウナのほうが体感は熱い。香りのせいか、湿度の違いか。
三巡目は再び薬草サウナへ。
この熱さ、まことに癖になる。何度でも戻ってきたくなる魔力がある。
最後は、サウナの締めとして盛岡冷麺を。
具材たっぷり、麺はもちもち。湯上がりの体に心地よく、実に美味い。
——創意と工夫に満ちた、個性派の名サウナ。
ここには、古戦場でしか味わえぬととのいがある。
再訪を心に誓いながら、私は静かに暖簾をくぐった。
男
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら