道の駅 上品の郷 (ふたごの湯)
温浴施設 - 宮城県 石巻市
温浴施設 - 宮城県 石巻市
仙台より車を走らせ、石巻市は道の駅「上品の郷(ふたごの湯)」に足を伸ばす。
含鉄塩化物泉なるものが皮膚病や婦人病に効くという話で、宮城県内ではここ一処しかないとのこと。入浴料は六百五十円と良心的、道の駅とあって土産物の品揃えも賑やかである。
さて、浴場に足を踏み入れる。湯船がふたつ、サウナ、水風呂。構成は極めて素朴なものである。
ただ、注がれる湯はいずれも茶褐色に濁り、どこか重みを湛えている。これが鉄泉というものか。体を洗い、檜の大浴槽に身を沈めると、循環濾過のためか色は幾分薄まっており、有馬温泉を彷彿する。
湯の縁に身を預けて眺めれば、どこか緑がかった色合いが目につく。思えば、これはヨウ素か。ヨウ素泉なるものには初めての入浴である。泉質の希少性もあいまって、得も言われぬありがたみを覚える。
いざ、サウナへ。室温九十五度、十名ほどの収容。
広さはないが、常連の賑わいが、ある種のぬくもりにも似て落ち着きを与える。テレビを正面に、黙々と熱を浴び、十分。
そして、今回の白眉、「源泉かけ流し」の水風呂へと身を沈める。湯よりもさらに濃い茶褐色の水が、静かに身体を包む。水温は十八度ほど。冷たすぎず、されど芯まで冴えわたる心地よさ。ずっと入っていられる、という表現が、これほど適切なものかと思う。
内湯、外気浴ともに椅子はふたつ。
外の空気に当たりながら、ただ静かに呼吸を整える。
二巡、三巡と重ねても、身体は芯から温まり、冷める気配がない。鉄泉の力というものは、まことに恐れ入る。
さて、最後は一杯。
いただいたのは、石巻産の牡蠣と金華塩を用いたクラフトコーラ、その名も「牡蠣くけコーラ」。一見すれば奇をてらったかに見えるが、実に、スパイスの香りが際立ち、深みのある味わい。シナモン、クローブ、カルダモン——これらが調和し、自らがかつて作っていたクラフトコーラの記憶を呼び起こす。
牡蠣という名に惑わされることなかれ。
これは「コーラ」として、正々堂々と美味である。
湯に浸かり、火に蒸され、水に冷やされ、コーラで喉を潤す。
——そういう日もまた、よい一日なのだと思う。
男
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