月見湯
銭湯 - 北海道 札幌市
銭湯 - 北海道 札幌市
札幌の寒気に包まれながら、私は月見湯なる銭湯を訪れた。地下鉄福住駅を降り、住宅街を抜けることおよそ十分。遠目にはごくありふれた町の湯屋であるが、サウナ好きの間では名の知れた存在らしい。
料金は五百円。入湯料とサウナ代が含まれてこの額とは良心的だ。受付の盆が三日月型であるのも、細部に遊び心を忘れぬ主人の性分が窺えて興味深い。
さて、肝心の浴場であるが、洗い場の占める割合が大きく、浴槽は内湯と露天の二種。サウナは二つ、メインの高温サウナとスチームサウナである。高温サウナにはHARVIA製の堂々たるストーブが据えられているが、出入りの多さゆえか室温は思いのほか低く、じっと座っていても、身体の芯まで温まるには至らぬ。下段は特に熱が回らず、上段を求めて腰を上げるも、常連らしき男たちの視線が突き刺さる。何か作法でもあるのか、訝しく思いながらも、ここは静観するほかない。結局、アウフグースを受けたのち、水風呂に沈み、ようやく整う。
水風呂は広さも深さも申し分なく、地下水を用いているのか水質が柔らかい。手持ちの温度計によると十六度。冷たすぎず、ぬるすぎず、適度な引き締めを感じる。
さて、本日の目玉はハルカ氏による熱波の会。ディズニーの音楽に乗せてタオルを振る彼女の姿は、まるで舞台上のパフォーマーの如し。サウナ室は小さいが、それがまた熱の籠る一因ともなり、扇がれるたびに熱が肌を焦がす。客もまた、ライブの如き一体感を覚え、自然と気勢が上がる。終幕後、じょうろにて頭上に水をかけられるという趣向もまた心憎い演出であった。
気づけば夜も更け、退館の刻となる。温度の低さや常連の不文律には一抹の戸惑いを覚えたが、熱波イベントの妙と水風呂の心地よさは記憶に残る。次の訪問の折には、もう少しこの土地の流儀を学んでみようと思う。
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