カプセルイン大塚
カプセルホテル - 東京都 豊島区
カプセルホテル - 東京都 豊島区
僕にとって最も季節の移り変わりを感じ取れるのはCIOで外気浴をしている時だ。
ひと月前は徹底的に身体を冷やさないとサウナ→水風呂→ほぼサウナで『ととのい』など遥か遠くの存在だったが、文字通り真夏のピークが去った今日この頃はある程度熱を保っていても、夜風が『ととのい』へと導いてくれる。
このサウナトランスに必要不可欠な『風』であるが、都内のカプセルホテルが持つアドバンテージとしてビル風というのがある。例えば上野の北欧であればトゴールの上を渦巻く風が他の施設では再現性の難しいあの空間をサウナーに提供してくれる。池袋のかるまるでは9階のビルから突き出たスペースで朝を迎えると、太陽に温められた空気が上昇気流となり吹き込んで来る。遙か眼下で繰り広げられる喧嘩の怒号が明治通りの風になりこちらまで届くのだ。大都市の鼓動が徐々に早まるのを感じることができるはずだ。
僕がCIOの外気浴で感じるのは、都会の喧騒というよりは夜市のような落ち着かない感覚と安心感だ。夜市といっても恒川光太郎というよりは、沢木耕太郎の深夜特急に登場する香港のような印象である。つまり着いたばかりの異国のホテルで窓を開けているような興奮している心境に、サウナトランスによる副交感神経優位の状態が重なっているアンビバレンスな状態に近いと推測する。
二つの感情の狭間にいる僕を夜風が包み込んでくれる。真夏に来た時はマンゴーのような甘い香りがした。まるで露天商が、聞き慣れない言葉で旅行客に商談を持ちかけている情景が目に浮かぶようだった。でも10月も近付くと流石に露天商も国に帰ったらしい。
片付けられた風鈴、夕方に買いに行った鯛焼きと包んだ新聞紙の香り、夕焼けと秋あかねと草むらを這う虫たちの足音、子供達が見つけるまでもなく、秋の気配をたっぷり感じた90分だった。
遠くの空にオリオンが見え始める。外気浴が心地よい季節は意外と短い、今年の秋はどこのサウナに行こうか、とても楽しみだ。
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