みやの湯
銭湯 - 大阪府 門真市
銭湯 - 大阪府 門真市
消えゆく銭湯の再生、という非常に意義ある事業に取り組まれているゆとなみ社様が大阪で最初に手掛けた門真市にある当該銭湯にイン。
見た目以上に深いジャグジー風呂、たおやかな曲線美がそのまま身体へのフィット率の高さを示す寝風呂を堪能してからサ室へ。
銭湯サウナにしては充分な広さ、木材の深い色、威厳と優しさを同時に内包して静かに聳立する遠赤ストーブ、2つ並んだスツール椅子、室温は92℃を指し、重すぎず、そして軽くもない湿度が悦びに満ちた意識の扉をそっとノックする。穏やかかつささやかでありながらも、そこには豊潤なメッセージがある。そう、サ室にはよく練り込まれたメッセージが宿っているのだ。
2段ある座面は既に先客がいた為、自然、床に設置されたクッション性の座面を持ったスツールに座る。
サ室では常にサウナマット越しに硬い木の座面に座らざるをえないしそれを不自然にも不満にも思った事はなかったが、このスツールには新鮮な驚きと意外性がある。
そう、サ室内で柔らかな座面に腰をかける事は意外に初めての経験であり、その意外性は速やかに「優しさ」に変換されて臀部からじっくり全身を包み込んでゆく。
窓を備えた壁側に設置されたスツールに腰をかけて天を仰ぐと、私の後頭部が窓の深い縁に丁度収まる。頭部は頸椎を起点に仰角ほぼ90°、静かに目を閉じてそのまま両手両足を投げ出す。あゝ、嘗てサ室内でこれ程までに弛緩しきった体勢を取った事があろうか?いや、ないと断言する。(このような体勢が取れるのも当該サ室が充分の広さを持っているから)
私の身体が液体と固体の中間相を呈している状態からかろうじて固体である肉体を選び取り、サ室を出て汗を流し、水風呂へ。
この日はチラーの調子が悪かったらしく、体感19℃程であったがそれもまた佳き。
若干の矛盾を孕みながら、私は「スローサウナ」という言葉を使う事がままある。
猛烈な熱さと強烈な冷たさと対峙した後、ととのい椅子の上でサウナトリップ、身も蓋もない言い方をするとラリったようになるのもサウナの愉しみ方のひとつだが、穏やかな熱のサ室と優しい緩さを湛えた水風呂でゆっくりとした時間の流れを感じるのもまた王道。
サウナ浴とは人間社会の貪欲性から離れ、人生を、1秒1秒の時間を、より濃厚に感得する為にあるのだから。
私はその状態をスローサウナと呼んでいる。
全てがスローで丁度いい。
4セット程キめ、私は完全に満足して当該銭湯を後にした。
ご馳走さまでした。
コロナ禍でさらに格差が拡大すると言われていますが、サ室の対等な空間に身を置くと「風の時代」が本当にはじまるのではと信じてしまいます。
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら