ヨコヤマ・ユーランド鶴見
温浴施設 - 神奈川県 横浜市
温浴施設 - 神奈川県 横浜市
チャンドラーはフィリップマーロウを生み、アガサクリスティーはポワロである。
ドイルがホームズなら乱歩が明智小五郎だ。
では、私めは何を生もう・・・。
依頼の内容はこうだった・・・
「潤くんが居なくなったの!!」
高音と低音の使い方も分からなくなる程取り乱した声で女は言った。
潤
年齢5歳
男
クリクリ目玉の茶毛
取り乱した女から何とか聞き出した情報はこれだけだ。
茶・・・
【小暮探偵事務所】
のチャイムが鳴った
ローレンバコール。
女の第一印象だ。
女は苛立たしげに煙草を咥え、細い煙を零した。
単純な話。
女が犬の散歩中目を離した隙に『潤くん』は消えた。
そして事件はとっくに解決済みだ。
見つかった場所は、消失現場近くのマンション前。
プリプリと尻尾を振っているのを若い男に保護された。
そう、「潤くん」は犬だ。
クリクリ目玉のトイプードル。
女の元にその若い男から電話があったそうだ。
何処から捜索しようか?とタンカレーでジンライムを飲りながら考えていた所電話が鳴った。
「今、と、取りに行けないから、引き取ってきて!!あなた何もしてないんだから、それくらいいいでしょ!!」
やれやれだぜ。
無事、潤坊を受け取り女の家と向かった。
チャイム。
4回目で女が出た。
ローレンバコールの様な切れ長な目元がドス黒く腫れていた。
女は潤坊を乱暴に受け取ると一旦ドア閉め、すぐに開けた。
黙って封筒を俺の胸に押し付けた。
港で車が上がったのが今日の朝だった・・・
身元不明の男女と犬が乗った車だ。
犬にはブランド物の首輪と『潤』とネームタグがついてあったそうだ・・・
3月26日
サ室
98度
いつもの調子だ。
悪くない。
水風呂
キリッと冷やしたスピリタスの様に刺激的な液体
蒸発する意識
『潤』というのは若い男の名前で、女はヤクザの愛人だった。
犬の散歩というのはカムフラージュで毎日男のマンションで逢引をしていたのだ。
女は、その男と知らない若い女が腕を組み歩いているのを見つけ呆然としいてた。
その間に犬が消え、行き慣れた男のマンションへと向かっていたのだ・・・。
サウナを上がり身体を拭いているとぷつぷつと体に湿疹が出来ていた。
犬アレルギーを思い出し、潤坊の温もりを思い出した・・・
今夜は「潤坊」の弔いにソルティードックを飲ろう・・・
PS
3月26日は
我が青春の師、萩原健一氏の命日です。
故 木暮修こと萩原健一へ捧ぐ
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら