2020.03.31 登録
[ 和歌山県 ]
一言:即興的虚構〜自戒の念といつもの施設へ感謝を添えて〜
僕は坂を下っていた。駐車場へと向かって、川辺の湯安庵を目指して。
すたすたと歩く僕を見つけ、向こうからきた二人組のうちのひとり、ウェーブした金髪に丸メガネのイケてるお姉さんが言った。
「この辺で逃げた芝犬見ませんでしたかー?」
僕は持ち前のシャイな性格と道化師的根性で努めて明るく言った。
「あー、ちょっと、、、分かんないっすね〜」
「そうですかー、すいませーん」金髪垂らして、揺らして。
すれ違いながら、僅かに目を合わせ、俺はマスク越しでもわかるビッグなスマイルを目元に携えたまま、旅館でしこたま呑んでから気紛れでするピンポンみたいな会話を思い出し、坂を下りながら絶望的な気分になった。
なんで俺はいつもこうなんだ? 人の心に寄り添うって事が出来ないのか?! どうせ暇なのに「僕もこの辺探してみます、ウォーキングの途中なんで」ってなんで言い出せない? 本当にくだらないよな。そのくせ実際は逃げた子犬とかあの女の事ばっかり考えているんだから。
はぁあ…。
さてさて、熱くなってしまったけど一応サ活としての体裁を保つ必要があるよな。まあな、ここの遠赤サウナと水風呂に文句があるなら、其々、自分の身体を指先まで点検し直したほうがいいぜ。そん時はぜひ露天のデッキでな。自由なんだ、只々、まっ平なデッキってのは。月にかかる雲を眺めたりしながらさ。とはいえ実際、普通のスパ銭なんだけど。でもこういう施設の有り難さを忘れるってのはコトだぜ? 皆さん身に染みてる事でしょうがね。
帰り道の薄暮だな。サウナ上がりの流線型の車にはやっぱりモグワイの音楽が似合うよな。しかしBluetoothってなんなんだ、俺はお前の姿かたち、一度も見た事ねえぞ、うまく繋がらねえ。それはさておき、モグワイってのはでっかい氷河を真っ二つにしたら空洞があって、そこで人知れず鳴ってる音みたいで励みになるんだ。1センチだけ開けた窓からは風が吹き込んでらぁ。
注意深くバック駐車。夜の肌寒さ。坂を上がる。前からなんと再び、あの二人組の女。
「ワンちゃん見つかりましたぁ」
「そうなんですね〜、なんかずっと気になってて〜」
あはははー。偶然だな全く。こんなに立派なシバの成犬だったのか。心配しちまったじゃねえか。サウナで流した汗の分だけ照れちまうぜ。でも良かったよ、見つかって。
男
[ 和歌山県 ]
“もう一度探し出したぞ
何を? 永遠を。
それは、太陽と番った
海だ。”
白浜の海に沈む夕陽を眺められる立ち湯が素晴らしいクオリティでした。このためだけに来る価値があるのにサウナも楽しめるなんて嬉しいな。
※サウナは男性浴場のみ。13:00〜22:00までの稼働。
#サウナ
L字の2段で最大でも8人くらい。ストーンの小さいストーブが2台。入口にはビート板が3枚ほど用意されていた。けっこう熱いしテレビもないから集中力が持たない。まあ飲み放題とビュッフェに気を取られていたからだけれど。6分くらいでも良い発汗。
#水風呂
これは流行りのインフィニティというやつなのかな。浴槽は浅いけどキリッとした体感だし水質も良い。高い天井の下で開放的に水が溢れるその先にキラキラ光る海がしばらく繋がっているっていうのは心を落ち着かせるもんだな。
#休憩スペース
ととのい椅子がないとか露天スペースが水風呂から遠いとか不満がないこともない。でも洗い場の平らな木の椅子は安定感があった。更にこれは持論だけど背骨と骨盤をピンっと直立させる方が快感も増す。しかしまぁここの立ち湯から太陽と海を見ているとそんな事を気にする必要もなくなる。湯船に満たされた熱い湯(水深120cm)に全部任せておけばいいやって思えるから。
P.S.
近くにある京都大学白浜水族館も面白い所でした。薄暗くて静かで落ち着きます。手蔓藻蔓(テヅルモヅル)が素敵。字面も美しいですよね。
男
[ 和歌山県 ]
サウナ:7分 × 3
水風呂:2分 × 3
休憩:5分 × 3
合計:3セット
一言:漢薬蒸湯※における小さいけれど革新的な改善、およびささやかな目論み
※(漢薬蒸湯は蒸気に籠められた七種類の漢方のエキス(名前は全部忘れた)だけでなく、同じ室内で日替わりの薬草風呂が楽しめる意欲的な設備だ)
寿司を六貫乗せる板みたいな小さくて低い木製の椅子が一般的なととのいイス四脚に変更されている事を今日私は発見した。座面の位置が上がることで体感温度も高まり以前より断然気持ちが良いし姿勢も楽なのが素敵だ。
いつもの通り高温のスタジアムサウナへ。ガラガラだったしカラカラでもあった。良い。
水風呂はいつもより長く浸かった。身体の表面に膜が張ってから、更に硬い殻が出来上がったことをしっかりと確認して。
漢薬蒸湯の真新しい椅子に深く腰掛ける。思った通り、お母さんの胸の中のような無条件の優しさと温かさが染み込んでくる。その温度に静かに身を委ねた。
凍えた手足に血が通い、皮膚にヒビが入るみたいに痺れるのを観察する。しばらくすると気道に冷気が戻ってきて、それが頭の頂点まで抜けていくのを感じた。
そして僕を覆っていた硬い殻は音を立てる事もなく粉々に砕け散ってしまった。これまでとは違う新しい感覚が僕の中に生じたのが分かった。
眼前の大きくて曇った窓をすり抜けて、ひよこが空へ羽ばたいた。
おわり🐣
追伸
右側の浴場のスチームサウナはひんやりしてました。ひよこって飛べるんでしょうか。
男
男
日程や人数、部屋数を指定して、空室のあるサウナを検索できます。