川辺の湯安庵
温浴施設 - 和歌山県 岩出市
温浴施設 - 和歌山県 岩出市
一言:即興的虚構〜自戒の念といつもの施設へ感謝を添えて〜
僕は坂を下っていた。駐車場へと向かって、川辺の湯安庵を目指して。
すたすたと歩く僕を見つけ、向こうからきた二人組のうちのひとり、ウェーブした金髪に丸メガネのイケてるお姉さんが言った。
「この辺で逃げた芝犬見ませんでしたかー?」
僕は持ち前のシャイな性格と道化師的根性で努めて明るく言った。
「あー、ちょっと、、、分かんないっすね〜」
「そうですかー、すいませーん」金髪垂らして、揺らして。
すれ違いながら、僅かに目を合わせ、俺はマスク越しでもわかるビッグなスマイルを目元に携えたまま、旅館でしこたま呑んでから気紛れでするピンポンみたいな会話を思い出し、坂を下りながら絶望的な気分になった。
なんで俺はいつもこうなんだ? 人の心に寄り添うって事が出来ないのか?! どうせ暇なのに「僕もこの辺探してみます、ウォーキングの途中なんで」ってなんで言い出せない? 本当にくだらないよな。そのくせ実際は逃げた子犬とかあの女の事ばっかり考えているんだから。
はぁあ…。
さてさて、熱くなってしまったけど一応サ活としての体裁を保つ必要があるよな。まあな、ここの遠赤サウナと水風呂に文句があるなら、其々、自分の身体を指先まで点検し直したほうがいいぜ。そん時はぜひ露天のデッキでな。自由なんだ、只々、まっ平なデッキってのは。月にかかる雲を眺めたりしながらさ。とはいえ実際、普通のスパ銭なんだけど。でもこういう施設の有り難さを忘れるってのはコトだぜ? 皆さん身に染みてる事でしょうがね。
帰り道の薄暮だな。サウナ上がりの流線型の車にはやっぱりモグワイの音楽が似合うよな。しかしBluetoothってなんなんだ、俺はお前の姿かたち、一度も見た事ねえぞ、うまく繋がらねえ。それはさておき、モグワイってのはでっかい氷河を真っ二つにしたら空洞があって、そこで人知れず鳴ってる音みたいで励みになるんだ。1センチだけ開けた窓からは風が吹き込んでらぁ。
注意深くバック駐車。夜の肌寒さ。坂を上がる。前からなんと再び、あの二人組の女。
「ワンちゃん見つかりましたぁ」
「そうなんですね〜、なんかずっと気になってて〜」
あはははー。偶然だな全く。こんなに立派なシバの成犬だったのか。心配しちまったじゃねえか。サウナで流した汗の分だけ照れちまうぜ。でも良かったよ、見つかって。
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら