滝原温泉 ほたるの湯
温浴施設 - 和歌山県 有田郡広川町
温浴施設 - 和歌山県 有田郡広川町
九十九折りの山道を這うように貧弱な車を進ませる。わずかな谷筋の道。山の塊に招かれて、細い道路が蛇行して消える先を目指す。親切な機械の女はこんな山奥のルートまで把握していた。
ほたるの湯は山と川に囲まれている。
低く抑えられた軒先から館内に入ると、公共施設に特有の少し淀んだ雰囲気。とはいえ清掃は行き届いている。低くて大きなソファーや売店の古めかしさが愛おしいというだけで。
シャワーから微かな硫黄の香り。
外湯では光と石と水が仲良くしてる時の匂い。
ヌルヌルする身体の表面。昼間食べた鰻みたいだな、と馬鹿みたいな考えもスルスル出てくる。温泉も太陽もあついから。
#サウナ
年季の入った飴色の木と綺麗に敷かれたマット、なによりその優しくも確かな熱に直感する。ここは素晴らしいサウナだと。それは最後まで裏切られなかった。最高よ。静かな水の音だけが響く室内は古い木の香りなのかアロマなのか、ずっと良い香りがしていた。適切な湿度も鑑みると定期的にロウリュされているのかもしれない。定員は8名ほどでL字型の二段。現在は3名までの制限あり。私と老人が蒸される部屋に親子が入ってきたが、こどもが熱さに驚き入口で引き返した。少年、いつか導かれる日が来ます。
#水風呂
正解はこれなんだろうか。冷えてて清らかで深い。無骨な鉄管から潤沢に吐き出されては溢れていく水。胡座を組んで沈み込むと額まで冷やされた。浴室の大きな窓からは松の木が顔を見せる。松の木にも水風呂に浸かる男が見えているはずだ。繊細な松葉が集まってモフモフする可愛いらしさに時間を忘れる。
#休憩スペース
背の高い緑に囲まれて視線は遠い山へと抜けていく。椅子の代わりに置かれた二つの岩はシャワーを浴びせると黒の深さが際立った。平らな表面と肌が吸い付く様にぴったりと合わさると動けなくなる。吹き下ろされる風が葉っぱの重なりを揺らしているのをただ見つめて。暫くするとサラサラとカサカサが合わさって肌が震え出すのがわかった。蝉の声止まった。
男
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