神戸サウナ&スパ
カプセルホテル - 兵庫県 神戸市
カプセルホテル - 兵庫県 神戸市
この世に甘美な物は、どれ程あるだろう。
紛れもなく、美しく甘い、シャトー・ディケムやジレといった、黄金色の酒。
秋の木の実をたらふく食べた野鹿の、
南海の花粉のような芳香を発する肉、
口の先で震える片貝の腸の凍てつくような歯ざわりにも、形容を越えた味わいがある。
(福田和也「甘美な人生」ちくま学芸文庫)
神戸サウナで柑橘の香りの熱波を浴びながら思う。
甘美な時間とはこういうことだ、と。
大学時代に気鋭の文芸評論家の福田和也の文に衝撃を受けて以来、
新刊が出るたびに本を追っていた。
福田和也から学んだ甘美なもの、
ヘミングウェイの「移動祝祭日」、
南部の慰安と福田が自著のタイトルにしたリキュールのサザンカンフォート、
ベーコンの脂が贅沢なイノダコーヒのクラブハウスサンド、
山県有朋の簡素にして洗練された庭園の無鄰菴。
挙げるだけでもきりがない。
ただ、ここ数年はまともにかっちりとした本を開く余裕もなく、
福田和也の近著も読もうとも知ろうともしていなかった。
ここ数ヶ月、時間と気持ちに余裕ができたので、久々に最新本がないかと調べたら、
福田和也が昨年亡くなっていたことを知った。
どんな状況であれ、甘美な時間を真剣に味わうことの大切さと厄介さを教えてくれた福田和也。
私はサウナ、酒、書物、映画などとこれからも真摯にむきあっていきたいよ。
碩学とサウナに感謝。
男
「保守とは横丁の〜」や「放蕩の果て」(草思社)などの晩年の著書では、「大病を患って、書けなくなった」というようなことも書かれていました。盟友の料理人も亡くなられていたのが悲しいです。
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