和合の湯
温浴施設 - 静岡県 浜松市
温浴施設 - 静岡県 浜松市
雨模様の日曜日。
昨日に引き続き、今日も朝から和合の湯へ向かう。昨日あれほど「明日は家でゆっくりしよう」と思ったのに、気づけば車のハンドルを握っている。
人間、心と体が別々の意思を持つ瞬間がある。私の体はどうやら、湯気とサウナの蒸気に操られているらしい。
館内に入ると、いつもの懐かしい香りが出迎えてくれる。あの石鹸と木と湯気が混ざった香り。まるで昭和の銭湯の幽霊がまだどこかに住み着いているかのようだ。
脱衣所には、昨日も見たような常連さん。まるで私がループもののドラマに迷い込んだかのようなデジャヴ。いや、彼らからすれば、私こそ「昨日もいたな」と思われているかもしれない。
ここは時間が溶ける場所。カレンダーの概念など無意味だ。
浴室は少しレトロなタイル張り。
光沢のある青と白のコントラストが、昔ながらの銭湯の風情を残している。まずは炭酸泉へ。ぷくぷくと泡が肌を包み込み、昨日の疲れと今日のやる気を同時に溶かしていく。ジェットバスで肩を叩かれながら、「これが文明のマッサージチェアか」と心の中でつぶやく。
昭和の風呂文化に令和の機械力。いい時代に生まれたものだ。
いよいよ本命、サウナ室へ。
扉を開けると、むわっと熱気が顔をなでる。温度計は90℃を優に超え、昭和ストロングの名を裏切らない。木の香りと遠赤ストーブの熱が、じりじりと肌を焦がす。
テレビではNHKの討論番組。政治家たちが熱弁をふるうが、こちらの方がよほど熱い。彼らが「経済をどう立て直すか」を語る横で、私は「心をどう立て直すか」と格闘している。汗が目に入って視界が滲む。ああ、日曜討論よりドラマチックだ。
限界を感じてサウナ室を出ると、すぐに冷たい水風呂へ。
一瞬で全ての思考が吹き飛ぶ。これが俗に言う“脳内初期化”
冷気が皮膚を突き抜け、頭の芯まで刺さる感覚。思わず「あ゛ーっ」と声が出るが、誰も気にしない。ここではみんな同じ顔、同じ呼吸、同じ放心。
そのまま露天へ。
外は小雨。屋根のないベンチに腰を下ろし、雨粒を肩に受けながらぼんやり空を見上げる。傘を差さずに雨に打たれるなんて、普段なら絶対にしない。けれど、湯上がりの今はそれが妙に気持ちいい。雨と汗と湯気が一体化し、なんだか自分もこの世界の一部になったような錯覚に陥る。
結局、昨日と同じ時間に同じ場所で同じ顔ぶれを眺めている。
でも不思議と飽きない。
和合の湯とは、そういう場所なのだ。
雨の日も晴れの日も、同じようで少し違う。
そして今日もまた、私は湯に溶けていく。
まるで、昭和と令和の間に漂う湯気のように。
以上
男
さときちさん、いつもありがとうございます! そんなふうに言っていただけて本当に嬉しいです…! 少しでも“現地気分”を感じてもらえたなら書いてよかったなと思います。
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