和合の湯
温浴施設 - 静岡県 浜松市
温浴施設 - 静岡県 浜松市
雨模様の日曜日。
玄関を出た瞬間、しとしとと降る雨が頬に当たる。傘をさすほどでもないが、空気はしっとりと湿り、秋の匂いが濃く漂っていた。車を走らせ向かった先は、浜松市和合町の「和合の湯」
今日は26日、毎月恒例の“風呂の日”。入館料はなんと400円。小さな幸福がそこにある。
館内に足を踏み入れた瞬間、懐かしい香りが鼻をくすぐる。どこか昭和の銭湯を思わせるような、石鹸と湯気と木の混ざった香り。脱衣所には地元の常連客たちの笑い声。今日はいつもより少し賑やかだ。
浴室の扉を開けると、白い湯気がふわりと迎えてくれる。少し熱めの湯船に身を沈めると、肌がきゅっと締まる。湯の温度に負けじと、体の芯がじわじわと熱を帯びていく。窓越しに見える雨粒が、湯面に映って揺れている。外の冷たい世界と、内の温かな世界。その境界線が曖昧になる瞬間だ。
そして、サウナ室へ。木の香りが立ちこめ、遠赤ストーブの音が静かに響く。
これぞ「昭和ストロング」飾り気のない、実直な熱。
温度計は90℃を指しているが、数字以上に熱が生きている。テレビのチャンネルはNHK。ちょうど昼のニュースが流れている。映像よりも、その音がリズムのように聞こえる。汗が首筋を伝い落ち、タオルが重くなる。
扉を開け、水風呂へ。チラーがしっかり効いた、まさに“キンキン”の冷たさ。肌が一瞬で引き締まり、脳天まで電流が走るような感覚。熱と冷の狭間で、体がリセットされていく。呼吸が深くなる。生きていることを全身で感じる。
そのまま、雨に濡れる露天へ。屋根の下のベンチに腰を下ろすと、風が頬を撫でる。雨音が一定のリズムで響き、遠くで車の走る音が混じる。しとしとと降る雨に打たれながら、目を閉じる。
外気浴というより、自然との対話の時間だった。
熱を浴び、冷に包まれ、雨に打たれる。
この繰り返しの中に、日常の雑音が溶けていく。
風呂の日、400円の贅沢。
湯に浮かびながら思う。お金では買えない静けさや、雨の日ならではの情緒が、ここには確かにある。
400円で得たのは、ただの入浴ではなく、心がほどけるようなひとときだった。
以上
男
トントゥありがとうございます。
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