【閉店】高砂湯
銭湯 - 東京都 立川市
銭湯 - 東京都 立川市
私の自転車には、スタンドは付けてない。ささやかな不自由は、時にささやかなサプライズを引き寄せる。置く場所の決め手に欠けて行ったり来たり、ウロウロとしていたら、青いシャツの男性が、手で招き、赤いバイロンを退けてくれたので、頭を下げて顔を上げたとき、背中の温泉マークが目をよぎった。
今日は下見に来たはずが、迷わず下駄箱の37番を握りしめ、番台に向かって歩いていった。
浴場は窓が多く、壁が白く明るく、
桶と風呂椅子は入り口近くに集めてあるオーソドックスなスタイルで、サ室にはひな壇がない。意外だが、初めてのスタイルだった。何段目に座ろうか、と言った選択肢のない不自由が、選択のストレスから開放してくれたので、入室して間もなくととのいへの一段を既に踏み出していた。
温度は87度、高湿度、ミストサウナに近いしっとりした感じ、TVもなく、明かりもひとつ、じっくりと蒸されていると、瞼が降りてきて、昨日のつまみのハツ刺しの、低温調理を思い出して親近感が芽生えた頃、時計はすでに12分を超えていたが、ゆっくりと汗を拭き取って最後の仕上げに入って行った。
水風呂は、正直ぬるいが、じっくり浸かりゆっくり衣を脱ぐと、体にまとわりつく絹のような肌触りが感じられ、いつもは冷え切る前にすぐ出るが、ゆっくりと水風呂を堪能できるのは、ささやかなサプライズだった。
浴場にはしょっちゅう青いシャツの方がウロウロ、換気やらお客さんの世話やらしていた。
皆さんマナーがよく、常連さん同士の挨拶もちょくちょく耳にして、たくさんの方が大切にされていることが
また、コミックコーナーの、少数精鋭の超厳選ぶりに感動し、思わずファブルの第二部を手にとって遅くなった。
銭湯はどんどん減っている。
でも、こんな場所はぜったいなくなるはずがないよ、なんて思いながら靴を履こうとしたところ、靴履きベンチに置かれた座布団に気が付いた。そのささやかな、優しさのサプライズに不意打されて、青シャツの背中の温泉マークに感謝した。
歩いた距離 1km
男
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