スポーツクラブ ルネサンス 北砂
スポーツジム - 東京都 江東区 会員のみ
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『親子風呂』6
翌朝またも学校には風邪で休むと電話をした。
こんな嘘がいつまで通用するのだろう…
その日東京は昨晩から降った初雪で数センチの積雪となった。
交通事情が心配されたが車で向かう事にした。
カーナビに『東京少年鑑別所』と入力した。
1時間半程で到着した。
その建物は公民館のような感じだった。
私の中では高い塀に囲まれた薄暗い建物のイメージだったが意外にも明るくきれいな印象だった。
施設の駐車場にブルーのマイクロバスが止まってた。
なぜだか頭の中に中島みゆきの歌が流れた。
受付で面会請求書に記入し待合室で待機した。
パンフレットの様なものが置いてあり、所内でのタイムスケジュールや食事の写真が綴られていた。
所内で日用品の購買も出来るらしい。
面会時にジュースのみ差し入れが可能のようだ。
5分程たった頃だろうか
部屋のスピーカーから無機質な声が聞こえた。
[1番札をお持ちの方、面会室にお入り下さい…]
部屋の前に自販機がありペットボトルのアクエリアスを買った。90円…シャバより60円安い…なぜだ…
部屋に入ると係官らしき人物が鍵をかけた。
8畳ほどの広さで真ん中にテーブルが置いてあり、向かい合わせで椅子が1つと2つ。横に係官が座る。
その1つの椅子にSがうつむいて座っていた。
不思議な光景だった…
一昨日の朝まで普通の生活を送っていた息子が施設の服を着てサンダル履きでそこに座っていた。
嫁は号泣し床に崩れた。
[制限時間は12分です。]
係官が無表情で言った。
言葉が出ない…
ここに来るまでは顔を見たら怒鳴りつけてやろうと思っていたが全て吹き飛んだ…
何か喋らなくては…言葉を探した。
[飯は食ったのか?]
[風呂には入れたのか?]
これしか言えなかった。Sは
目に涙をためて頷いていた
今何分が経過したのだろう…
嫁の肩を抱き、今日はこれで帰ろうと言った。
係官が[まだ時間は残ってますよ]と促してくれた。
[今日はこれで失礼します。また伺います。]
深々と頭を下げ施設を後にした。
その晩、リビングで酒を飲んでウトウトしていると浴室の方から長女の叫ぶ声がした。
[母ちゃん何やってるの❗]
慌てて浴室に向かうと、そこには出しっ放しのシャワーの下にうずくまり何やらブツブツ呟く嫁がいた。
[カエセ…カエセ…カエセ…]
この瞬間思った
二次災害だけは何としても防がなければ…
続く…
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