3月4日の東京は16度に達しており、薄霞から漏れる太陽は、徐々に春に近づいた色で街を照らしている。春の陽気が包む街、清澄白河。一つ路地を曲がると、辰巳湯があった。
番台を過ぎ、コの字型になったロッカーに荷物を預ける。ロッカーの上には数百冊の漫画。横目に見えるテレビは、女子ゴルファーが打つ球の放物線が、後付の青でなぞっていく。
浴場に入れば、橋と岩に腰掛ける女性のモザイク壁画が出迎えてくれた。壁画の上の窓からは陽光が白のタイルを照らし、反射したクリーム色は、どこか牧歌的な雰囲気にさせる。
サウナ室は4段になっていて、一段二人程度のこじんまりとしたスペース。自然と身を縮めて座り、テレビも何もないサウナ室で目を閉じる。鼻孔に届くのは、かすかなガスの匂いにと、シトラスのようなヴィヒタの香り。無音。集中していく精神。ジリジリと焼かれていく皮膚には、ポツポツと汗が染み出していった。
サウナ室を出ると、玉のような汗が皮膚に浮かんでいた。熱さを証明している。水風呂は露天の方にあった。横幅の狭い扉を開けると、一転して薄暗い部屋が広がっていた。真正面の水風呂は、光量の少なさで、20度近くを示しているが、冷え冷えとした心持ちにさせる。足を伸ばして天井を見やると、黒い屋根が底抜けに寒々しさを感じさせて、体感温度は13度ほど。衣がまとって行く、そんな感覚だった。
小上がりのような休憩スペースに行くまでの間、空が開け上を見やる。背の高い年季の入ったマンションの外壁が、藪の間から光を伴って景色を映した。休憩スペースは、漆喰をヘラで丸めたような丸の跡が残る壁と、一面の漫画が取り囲んでいる。10席弱の椅子に腰掛け上を見やる。夥しい数のぬいぐるみの目線が、僕を見つめている。扇風機からカラカラという音と共に風が送られてくる。冷えていく体、体から抜け出ていく熱量、塗りつぶされた黒の瞳。
3セットをこなし、徐々に人が増えていく辰巳湯は、少しずつ地元の銭湯の雰囲気にあふれていった。浴場を出て、オロナミンCを一瓶。染み渡るが、渇きは癒えない。いま求めているものはビールだ。10分ほど歩き、居酒屋のだるまにたどり着き、一杯と肴に舌鼓を打つ。下町の風情は、途中の商店街で存分に味わえた。イワシを一枚、あん肝を一口。景色が少しだけ味わいを深くしてくれた。

歩いた距離 2km

ダンペー〈Have a Nice Day! Beautifuさんの辰巳湯のサ活写真
ダンペー〈Have a Nice Day! Beautifuさんの辰巳湯のサ活写真
ダンペー〈Have a Nice Day! Beautifuさんの辰巳湯のサ活写真

だるま

あんきも、イワシ

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