瀬戸谷温泉ゆらく
温浴施設 - 静岡県 藤枝市
温浴施設 - 静岡県 藤枝市
尾のへの桜いかならむ
この季節、なんとも私の心をくすぐるのは、
遠くの山の緑のなかに
ぽつり、ぽつりと淡く咲く、桜の白さである。
夜の間に、春の精がそこに集い、
満ち満ちた春の気の、その名残りかのような。
春霞は、そこから立ちのぼるものであるかのような。
いつ、誰が、
そんな山のなかに、ぽつりと桜を植えたのだろうか。
蓋し、私のこの夢想は、
この歌に端を発しているように思う。
『花の色は かすみにこめて 見せずとも
かをだにぬすめ 春の山かぜ』
(山に咲く桜の色は、霞にさえぎられて見えないけれど、
せめて香りだけでもそっと運んでくれ、春の山風よ。)
昔、飼っていた犬は、風が吹くとよく、
風の流れをたどるように顔をあげ、
クンクンと鼻を鳴らしていた。
この子は風の中に、どんな匂いを感じているんだろう。
私には感じ取れない風の匂いを嗅ぎ分ける、この獣の嗅覚を、
私は少しうらやみながら、
この愛くるしい仕草を眺めるのであった。
さて、サウナの方はというと、
この私を、かくも恥ずかしげもなく詩人たらしめるほどに、
素晴らしいものであった。
かすかにそよぐ、春のやわらかい風を感じながら、
ひさびさに、静寂が支配する至高の空間を堪能した。
この施設がサウナーの注目を一向に浴びないことが不思議でならない。
それにしても、前回のおろちんゆーからの落差たるやこの。
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