2019.10.19 登録
ビールが飲みたい。
春の釧路は基本的に天気が悪い。天気予報では晴れのマークでももやっと霧が立ち込める。お布団干すのも命がけ、サバイバルの街それが大都会釧路だ。
ビールが飲みたい。
今日は朝からスカッと快晴、天は青く突き抜け手を伸ばせば宇宙だって掴めそうだった。太陽の射す光が何条もの筋になって、僕の腕を突き抜けていく。
ビールが飲みたい。
昔読んだ小説の登場人物に、朝から酒を飲んでは管を巻くろくでなしがいた。読んだ時分には若いながらもこんな人間にはなるまい、立派な人間になるんだとたしか思ったはずだ。
ビールが飲みたい。
僕の中で何かがスパークしたのだと思う。太陽の光と青い空と、しょっぱい風、自分の加齢臭。ボタンを押す、ライトが光る。レバーを引く、タライが落ちる。複雑に組み合わされた極めてシンプルな機械的な反応。
ビールが飲みたい。
朝からそんな欲求を抱えつつ、妻の言うとおり家事をこなし買い物に付き合いご近所付き合いもやり、ランチを食べた。美味しい健康的なランチ、有機野菜がどうたらのアレと朝とれた魚のウンタラと、店員のマスク越しの笑顔。
ビールが飲みたい。
Twitterで何気なく、釧路で昼から飲める店を聞いてみたところ、即フォロワーさんが何軒かのお店を教えてくれた。迷ったけれども、でも行くと決心して家を飛び出したのだが、しかしここは大都会釧路、バスの時間くらいは予め調べるべきだったのだ。その店に行くバスは、もうなかった。
ビールを飲ませろ。
当て所もなく繁華街を彷徨ったけれども、空いてる店などなく寂れた廃墟だらけの町並みが、傾きかけた陽に鮮やかに照らされて僕の頭の中では新聞紙をつぶしたような音と竜騎兵のドラムロールが間断なく鳴り響いていた。
ただビールが飲みたいだけなのに。
おれもおまえもそこの誰かもみんなくそっくらえだ。くそっくらえだよ。
ビールもなければ愛もない、出来るなら昔流行ったくそったれの映画みたく叫びたかった。誰か助けてください。
そこにふっと現れた、看板。
「ホテルパコ釧路」
ビール、飲めました。
おいしかったです。サウナはいつもどおりよかったです。またいきたいです。きょうはとてもたのしい日でした。
[ 北海道 ]
年度納のサウナ
マイホーム栄湯、夢のマイホーム。
煮えたぎる湯船、マッシヴなサウナ、キンキンの水風呂、程よくぬるいそよ風外気浴。
最高だ、年度が納まる。スーパー気持ちいい。
風呂の後は、すぐ隣りにある三共八千代寿司でウマい刺身とアテで一杯。グルメの寿司屋じゃない、マチの寿司屋。その緩さウマさがサウナ上がりの心と身体にぴったりハマる。
明日から4/1、新年度。
僕なんかがリフレッシュして気合入れてもこのご時勢じゃあ何ともならんのかも知れないけれど、今日はしっかりリフレッシュできた。
風呂と酒とメシの喜び。非常に小さなつましいものだ。
でもそういうのを大事にして来年度も生きていこうと思った。そんな年度末。
サンキュー栄湯、三共 八千代寿司。
[ 北海道 ]
風が強く吹いている。冷たく乾いた風だ。
昨日少し顔をのぞかせた春は、出番を間違えてしまったことが恥ずかしいのだろうか、舞台袖に引っ込んでしまった。
三寒四温、ころころころころ変わる今日このごろ。
栄湯は今日も熱い。浴槽が熱い、サウナ室が熱い。
栄湯は今日も冷たい。水風呂が冷たい、外気が冷たい。
春が来るのは当たり前のことだろうか、四季がめぐるのは当たり前のことだろうか。
栄湯に、銭湯に渾々と湯水が蓄えられ、流れていくのは当たり前のことだろうか。
当たり前のことの一部が凍りついて動かなくなって1年が過ぎた。
不安や焦燥に駆られて落ち込んだ次の瞬間には、やる気と使命感に燃えていたり、自分のこころについていくのはしんどい仕事だ。
ころころころころ変わるこころのように、熱いと冷たいを行ったり来たり。
帰り道、厚い灰色の雲間から除く橙色の夕空はが美しかった。
サンキュー栄湯フォーエバー、450円。