南紀白浜温泉 ホテル川久
ホテル・旅館 - 和歌山県 西牟婁郡白浜町
ホテル・旅館 - 和歌山県 西牟婁郡白浜町
三年ぶりに、あの場所へ帰ってきた。
ホテル川久。
かつてバブルという熱狂が創り上げた夢の城は、今なおその煌めきを失っていなかった。豪奢で、非現実で、そして――筆舌に尽くしがたい。扉をくぐった瞬間から、私はただの旅人ではなく、どこか特別な世界の住人になったような気がした。
チェックインの応対ひとつで、思わず己が上級国民にでもなった錯覚を覚える。差し出される言葉も所作も、すべてが柔らかく洗練されていた。
午後三時きっかり、チェックインの時間に合わせて到着したのは、ホテルの隅々までを味わい尽くしたかったからだ。まずは前回訪れたときには足を運べなかったプールエリアへと向かう。
陽光を反射する水面の横に、ひっそりと佇むサウナがある。扉を開ければ、濃密な熱気が身体を包み込んだ。温度計はしっかりと90℃を指している。オートロウリュの音が静かに響き、木の香りと共に、じわじわと汗が噴き出す。
半年前に宿泊したマカオのフォーシーズンズをふと思い出した。材質の良さと丁寧な設計が、どこか似ている。だが、それは流行りの“ととのい”を追うサウナとは異なる。川久のそれは、格式と美意識の結晶のようだった。
汗を流した後は、水風呂代わりに隣のプールへ飛び込む。静かに体を冷やし、濡れた足を引きずりながらリクライニングチェアに横たわる。視線を空へ向ければ、琥珀色のホテルの外壁が、青い空に浮かぶようにして目に映った。
そして、夜――
サウナの余韻を抱えたまま、向かった先はホテル自慢のビュッフェ。まさに“サウナ飯”の極致だった。三年前にも感じた、あの驚き。川久のビュッフェは、記憶の中でずっと一位の座を守り続けていたが、今回もそれを軽やかに更新してくれた。
「この環境で、サ飯って言えるのかな?」
ふとそんな言葉が頭をよぎったが、意味はなかった。味わいのすべてが、そんな言葉をはるかに超えていたからだ。
贅沢とは、こういうものを言うのだろう。
再び訪れるたびに、その確信は深まってゆく。
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