【閉店】湯めらんど
温浴施設 - 北海道 札幌市
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僕は思う!この瞬間は続くと!いつまでも
遠足のおやつをリュックサックに詰め込んだ朝も、顧問の叱咤を受けながら土のグラウンドを駆けた昼も、卒論が進まずラジオを聴き続けた夜も、この瞬間は続くと思っていた。
ペンキ絵の富士山を眺めていた時も、洗面器ロウリュに顔をしかめていた時も、キンキンの水風呂に震えていた時も、そう思っていた。
「僕は思う!この瞬間は続くと!いつまでも」と歌う彼は、同じ曲の中で「本当は分かってる 2度と戻らない美しい日にいると」とも言っている。
そう、本当はわかっていた。
閉店まであと数日あるが、個人的には今日が最後の湯めらんど。
サウナ室の汗拭きタオル、脱衣場のベビーベッド、壁にしつらえられたビニール亀、全てが愛おしい。
そういえば一時期売られていた「コアラソフトクリーム」は謎のままになってしまった。ものすごく残酷な想像をしたが、そんなわけはないはずで、では一体何だったのだろうか。
フロントのお姉さんに「長い間お疲れ様でした」と言う勇気は当然なく、いつものように軽く会釈をして外に出た。この「いつも」も今日をもって「いつも」ではなくなる。
いつまでも続くと思いながら、2度と戻らない日にいることも本当はわかっていた。
だから、とっても寂しくて悲しいけど、いつか年を取ってから「環状沿いに『湯めらんど』ってあったべ?あそこにコアラソフトクリームってのがあってよぉ…」などと話す自分を想像してニヤニヤしたりもしている。
でもさ、
さよならなんて云えないよ。
…以上が2週間ほど前にしたためた文である。
反省点は多々あるが、そもそも行く前に書くなという話だ。人が死ぬ前から弔辞を用意しているようなものだろう。
文章自体もいつも以上にカッコをつけていて痛々しいし、好きな歌詞を引用して悦に入っている感じも鼻につく。
大好きな湯めらんどの終焉を前に落ち着かず、先走った挙句に変な力が入ってしまっていたのだ。
そんな中で迎えた今日のラスト湯めらんどだが、思っていたほど感傷的になることはなく、全くもっていつも通りだった。湯めらんどはそんなにヤワじゃない。
マッサージチェアやガチャガチャが撤去されていたのは少し寂しかったけど、仮に私が涙を流したとしても、湯めらんどは「チョイナチョイナ」と何食わぬ顔で受け流したことだろう。
計算したわけではないが、最後がロッキー側だったのはよかった。洗面器ロウリュはいつも通り強烈だった。おかげでよく眠れそうだし、明日は元気に仕事ができそうである。生活は続くのだ。
でもやっぱさ、さよならなんて云えねーよ!
2週間寝かせることで完成する文章が添えられたチョイナチョイナの花道というのは乙ですね。
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