天然温泉 湯どんぶり栄湯
銭湯 - 東京都 台東区
銭湯 - 東京都 台東区
下町というものに強い憧れがあるのは隠しきれないところだと思っている。下町というよりも「銭湯」だ。
大宮生まれの中年。北関東の入り口で生まれたことに誇りも何も無いだろう。生まれた土地が人間形成に関与するような古臭い時代ではない。そんなものは学歴と一緒でただのネタでしかない。
銭湯の話だ。
川口の風呂無しアパートに住んでいた祖母の家に遊びにいった折、よく銭湯に行った。名も分からず消えていった銭湯もあっただろう。何かひどく懐かしく、モノクロームな思い出として中年の心を乱す。季節は決まって夏だった記憶しかない。泣き出しそうな夏だ。
銭湯には個人的にそんな思い出もあり、折に触れて行きたくなる。ただ越谷レイクタウンには銭湯がない。かつては吉川にも蒲生にあったらしいが、引越してきた時にはもう無くなっていた。
チャリで行ける範囲で「登龍湯」という限りなくスパ銭に近い銭湯はある。ただ遠き川口の思い出すら想起しない残念な施設だ。スチームもあるが、サウナイキタイに登録しようとは思わない程度のもの。
湯どんぶり栄湯へ訪れたのは、TLを賑わすリニューアルの報がきっかけではあるけれど、年に数度訪れる銭湯への想い出を満たすためでもあった。
とはいえ地元民にとってはサウナー気取りの迷惑な新参者。なるべく迷惑をかけないよう開店直後を狙った。
初めてですと告げると受付のおばちゃんが優しく解説してくれる。手狭な下駄箱や機械は現代的だが牛乳中心の品揃え。ここは懐かしい銭湯だ。
サウナは90度。表示よりも熱い気がする。そしていい匂い。何やらオートロウリュしてそうな気配もあるけど、気のせいか。
同室には刺青のお兄さん。3分くらいのスパンでサウナと水風呂を繰り返していた。強面で屈強で刺繍。セット中に何度も入ってくるが、不思議と不快な感じはしなかった。寡黙に続けるサウニングだからだ。ペチャクリ男子の集団が例え無言であっても、そちらの方ががよっぽど不快だ。
露天に出た。おお!と唸る。確かに感じる開放感。噂の美泡水風呂がもうなんとも言葉に表せられないくらい、気持ちよかった。バイブラとも炭酸泉とも言えない中途半端な感じがとてもいい。
気持ち良すぎて調子に乗って、3分くらい入ってしまったが、その後ガッツリ冷やされていることに気づく。挙句、休憩ベンチでグワングワンになってしまった。ガンギマリ。
空を見上げると「サウナ」と書かれた煙突が見えた。その薄さとフォントも相まって、遠い記憶の中にあるような鉄柱が灰色の空に浮かんでいるようだった。
虚空に浮かぶ記憶。
10年後も20年後も果たして同じように見えるのだろうか。
りょう様 初コメにて失礼いたします。ここのところ湯どんぶりが気になっていた中、素敵な投稿をありがとうございます😊 りょう様の独特の言い回しが、スッと頭に収まってきました。
相変わらず観察力の冴えた情感のあるサ活ですね!というよりエッセイですね。さすがです。
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