【閉店】大正湯
銭湯 - 北海道 札幌市
銭湯 - 北海道 札幌市
かつて自分の思いをそのまま伝えることをよしとしない時代があった。
うつむきながら、「月が綺麗ですね」とつぶやくのが精一杯な。
ブレーキランプを5回点滅させるのが精一杯な。
そんな時代。
しかし、時は令和へとうつり、「相手に伝わりやすいやり方で思いを表現する」ことをよしとする時代になった。
人の流れは数値化され、コミュニケーションはより直接的になった。
それでもなお、大正湯は未だ伝えてくれない。あの頃がそのままそこにあるように。
------
のれんをくぐってから誰の声も聞こえない。
店主も何もしゃべらない。
浴場にいる常連も会話していない。
沈黙という贅沢。まるで「ここは風呂に入る場所で、それ以上でも以下でもない」と戒める空間が広がっているようだ。
あつ湯、薬湯、サウナ、キンキンの水風呂。
他に何が必要だい?
そんな問いかけすらしてくれそうもない。
すすきのの銭湯・大正湯。
かつてあった喧騒をしのばせるヒビの入ったサウナの窓ガラス。中央の大きな鏡を重ね合わせた洗い場。
静寂。
時折聞こえる女湯のおしゃべり。
ハードボイルドを絵に描いたような場所。
「これでいいです」
聞かれてもいない問いかけに心の中で答えてしまう。
------
サウナと水風呂のはてどもない繰り返しを終え、薬湯からぼんやりと天井を見上げる。
明り窓が少し開いている。
ぶっきらぼうな店主の時代に沿った心遣い。
だが、それをあからさまに伝えようとはしてくれない。それが大正湯なのだろう。
------
月が綺麗だと伝えることが精一杯な時代。それはたぶん時代ではなく、今なお残る人のあり方の話なのかもしれない。
それでも私は時代にそったわかりやすい伝え方をしたい。
「みんな、銭湯に行こう!きもちいいよ!」
しっとりした文体 大正湯の渋い趣 オチに笑った読者は 昭和の漫画のようにひっくり返ることでしょう
幸福な王子(豊平区)
イイフロ
良き風呂に。
スタンプラリーで行くのが楽しみになりました。
ド直球コメントありがとうございます!とりあえずご褒美さしあげときます!
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら