東京ドーム天然温泉 Spa LaQua(スパ ラクーア)
温浴施設 - 東京都 文京区
温浴施設 - 東京都 文京区
3,690円⁉︎
あまりに高い入館料に私は驚嘆した。
入館料に対する疑念を解消し切れぬまま、私は浴室の扉を開いた。
広がっていたのは目を疑う光景であった。
広大なスペースはさることながら、刮目すべきはその空間の使い方だ。
洗体スペースの幅は規格外に広く、水風呂が広場の中央に鎮座している。
中高問わず狭い教室には机が一定の間隔で並べられていたし、私の居室は様々な家具で埋め尽くされている。
「与えられたスペースは無駄なく最大限に活用する」それが私の常識だった。
そんな私にとって、この浴室は異質なものであった。
ここは空間を無駄遣いしている。
この贅を極めた空間の使い方は、我々から搾取した高価な入館料をもってして可能となっているのだ。
私は憤慨した。
なんたる傲慢。なんたる労働者への冒涜。
なんとか気を落ち着かせようと身体を清める作業へと移ったが、シャンプーで頭をこする私の指先には、確かな怒りの力がこもっていた。
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平静を取り戻し、サウナの偵察に入る。
薄暗い青光が妖しげに煌めく中で、テレビの強烈な光が場違いに存在を主張している。
嫌気がさした私は、まぶたを閉じて音の世界へと逃げる。
が、ここでもまた私の平穏を許してはくれない。
マスメディアの犬であるコメディアンどもが小さい箱の中でキャンキャンと鳴いているのだ。
やめてくれ。せめて音の世界だけは奪わないでくれ。
私の必死の願いが彼らに届くことはなく、彼らのカネを求める甲高い遠吠えは、私が部屋を後にするまで永遠と続くのであった。
もう無理だ、耐えられない。
私は逃げるように外へ出た。
この施設は私に平穏を許してはくれない。ここは自分には似つかない上流階級の世界なのだ。
私はそう自分に言い聞かせた。
事実上の敗北宣言であった。
悔しい。
私は拳を握りしめながら心の中で叫んだ。「全国のプロレタリア(労働者)、団結せよ」
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もう帰ろう。せめて最後に水風呂だけでも。
高校球児が甲子園の砂を持ち帰るように、私は最後にスパ・ラクーアの冷水を我が身に染み込ませることにした。
今日の屈辱を生涯忘れぬために…
汗か涙か、水滴にまみれた己の身体に湯をかけ、螺旋状の水風呂へと身を投じる。
その瞬間、私は一瞬にして全身の血管に血潮が巡りわたる感覚を覚えた。
新たな血を迎えた私は過去の自分との決別を果たし、一段高い階級へと足を踏み入れることが許されたのである。
かくして私は次なる世界、露天スペースへと足を踏み入れることとなる…
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To be Continued.
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