ゆげたろう

2022.03.10

1回目の訪問

かれこれもう22年も生きた。
私はずっと、自分という存在を愛していた。
かけっこはいつも一位、周りにはたくさんの友人、受験戦争も勝ち抜いてきた。

そして何より、私は面白かった。

私にとって人生は簡単だった。
"面白さ"を武器に、私は広大な城塞を築いていった。

しかし大学入学と同時に、私の帝国は終焉を迎えることとなる。
きっかけはある3人の友人との出会いであった。
「彼らには勝てない」
私が"面白さ"における敗北を認めるのに、1ヶ月もあれば十分だった。
それ以降私は、彼らに絶えず嫉妬し、自らの存在意義を見出せない日々を送り続けた。
_________________________

この日、私は彼ら3人と共にこのサウナを訪れた。
道中の車内は私にとって拷問であったのは想像に易いだろう。
やはり、私と彼ら3人の間の笑いレベルの差は、火を見るよりも明らかだった。
「早く帰りたい」、そんなことを思いながら私たちは4号棟「ネリャ」へと入っていった。

1セット目。外気浴中の小鳥のさえずりが、荒んだ私の心を和らげる。
2セット目。1セット目では気づかなかった、水が滴る音がひたすらと耳を打つ。
3セット目。今度は小さな焚き火の音だ。ずっと鳴っていたはずなのに気づかなかった。

その後も9セットまで、ただの一度も同じ外気浴は存在しなかった。
同じ体調、同じ場所でも、毎回絶対に聞こえてくる音が異なっていたのだ。

「皆は何の音が聞こえていたのだろう」
疑問に思った私は3人に尋ねたが、驚くべきことに、皆揃って別々の音を感じていた。

この時私は思い知った。
同じ人間は誰ひとりとして存在しない、その人にはその人だけの世界が存在するのだと。

"面白さ"も同じだ。人間には必ず、その人だけの面白さがある。
ナンバーワンなんてない。あるのはオンリーワンだけだ。

4号棟の煙突から立ち昇る蒸気と共に、私を縛り付けていた過去の城の幻影が、影をかすめていったように感じられた...
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この地の名前は『The Sauna』。
ここは天空のアジトでも、健康センターでもない。"The" Saunaなのである。

貴方はこの"The"という冠詞に、どのような物語を与えるだろうか。
1000人いたら、そこには必ず1000通りの『The Sauna』が存在する。

私にとっての『The Sauna』、それは新たな世界の始まりだ。
このオンリーワンの『The Sauna』を、私は心から愛している...

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2022.03.11 02:23
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The Saunaへの愛が溢れる素敵なサ活でした。 読ませて頂き、ありがとうございます。 今後も益々のサ活をお祈りしております。
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